2016年09月23日

フエフキダイ属の幼魚たち Young emperors

young emperors
(上から)ハマフエフキ(“タマン”)Lethrinus nebulosus / ハナフエフキ L. ornatus / タテシマフエフキ L. obsoletus

大きな魚を狙って、針掛かりした瞬間一気にアドレナリンが噴き出すようなスリリングな釣りも大好きだけれど、僕の原点はすぐ足下の海で多種多様な魚と遊ぶ五目釣りだ。海の中の様子とそこに暮らす魚たちのことを、潜らずとも、時には潜る以上に刺激的にかつ直接的に教えてくれる。

石垣島へ移り住んでそういう釣りをするうちに、フエダイ属の魚たちのバリエーション豊かさに惹き込まれた。一か所に3種、4種とフエダイの幼魚たちが見られる。その面白さに夢中になって足繁く釣りに出かけるうちに、気づけば名前のよく似たこのフエフキダイたちのコレクションも充実してきた。

おそらくフエダイも同じ由来であろう、笛を吹くように突き出した口先が特徴的。フエダイには鋭い犬歯を持つものが多くいかにも肉食といった風情なのに対し、このフエフキダイたちは(少なくとも幼魚は)幾分優しい顔つきをしている。が、油断は禁物。頰の筋肉がよく発達して噛む力がとても強く、大きな個体を釣り上げて針を外そうと不用意に口許に指をやるとザクリと切られることになる。胃袋の中に粉々に噛み砕かれた分厚いカニの甲羅が詰まっていることもあり、この突き出した口を使ってカニを隠れ処から引きずり出して食べる姿は容易に想像がつく。

フエダイにせよフエフキダイにせよ、同属の近縁種であっても生態はやはり種ごとに異なる。そもそも、生態が異なるものたちが長い時間を経るうちに別の種へと分化してきたのだ。それが一か所にいくつも見られるということは、その海がそれだけ多くの引き出しを持っているということをよく表している。


 
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2016年09月16日

ミスジチョウチョウウオ Chaetodon lunulatus

Chaetodon_lunulatus

おしどり夫婦、という言葉があるけれど、このミスジチョウチョウウオもなかなかどうして負けてはいない。海の中でこの魚と出会うときはほとんどが「つがい」の2尾連れだ。

Oval Butterflyfish=楕円形のチョウチョウウオの英名の通り、見事に滑らかな卵型をしている。輪郭としては飛び出している尾びれも中ほどの黒いラインのおかげで納まって見えるので、どうしても全体を卵型に見せたい事情があったんだろうな、と妙に納得してしまう。頭部には3本のライン、これは和名の「ミスジ」のもとになっているのだけれど、どちらかというと体側を等間隔に走る美しいラインの方がよく目につく。

そして泳ぎ方。あまりひらひらパタパタすることなく、「たくさんラインの入った卵型」を崩さず滑るように進むので、その姿にはどうも幾何学的な印象がある。そうしてつがいの2尾でつかず離れず、そこそこのスピードでサンゴの山を越え谷を渡ってゆく姿は見る者を惹きつける。せっせと足ひれを動かしたり、息を止めて少し潜ってみたり、追いかけるこちらもいつになくアクティブになってしまう。


 
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2016年09月09日

ミスジリュウキュウスズメダイ属の仲間たち Dascyllus spp.

Dascyllus_spp
(上から)フタスジリュウキュウスズメダイ Dascyllus reticulatus / ミスジリュウキュウスズメダイ D. aruanus / ヨスジリュウキュウスズメダイ D. melanurus / ミツボシクロスズメダイ D. trimaculatus

「2スジ、3スジ、4スジ」…〇〇リュウキュウスズメ3兄弟、なんともわかりやすいネーミングだと思う。そして残る一種も「3ツ星クロ」スズメなわけだから、このDascyllus属は徹底して紋様で和名を決めたということだ。体のフォルム自体はほぼ同じ、という点も併せて、蒐集欲を刺激する「絵になる魚たち」だと思う。しかも海外には紋様違いの別種がさらにいくつもいるというのだから、魚譜向けの魚たちだということは間違いない。

このなかまの群れ姿には独特の美しさがある。
たとえば鮮やかなブルーでよく目立つルリスズメダイのように、いる場所ならどこを見てもざらっと豆を撒いたようにいる、というのではなくて、比較的「このサンゴの周り!」というように居場所を決めて群れている。穏やかな礁湖の中とはいえ、常に波に揺すられる海の中でひとところにとどまって群れるというのはなかなか大変なことだ。だからその泳ぎ姿には常に一定以上の緊張感と、波に乗りつつ体勢を保つ動作のリズムがある。1センチ足らずの小さな個体ですら、ピンとひれを立てた完璧な造形で、流れに合わせてめまぐるしく体を翻らせる。その姿にはいつも惚れ惚れして、息が続かなくなるのも忘れてサンゴの陰に身を潜めたままずっと見ていたいと思ってしまう。


 
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2016年09月02日

フエダイ属の幼魚たち Young snappers

Young snappers
いずれも釣りで出会うことができたフエダイ属(genus Lutjanus)の幼魚たち。
(左列、上から)ゴマフエダイ Lutjanus argentimaculatus / ロクセンフエダイ L. quinquelineatus / イッテンフエダイ L. monostigma
(右列、上から)ナミフエダイ L. rivulatus / バラフエダイ L. bohar / オキフエダイ L. fulvus


石垣の海は、「フエダイの海」だった。
種類も個体数も豊富で、どこで潜っても、どこで釣りをしても、どこで磯遊びをしても一種はこの仲間と出会うことができる。

この仲間の「萌え」ポイントは、同じフエダイ属にありながら体形も顔つきも色彩も生態もさまざまであるところ。特に生息環境には種ごとの、そして成長段階ごとのポリシーがはっきりとあるようで、出会える場所とサイズがだいたい決まっている。

ゴマフエダイ。河川の河口近く、満潮時には海水が逆流してきて溜まるようなところには、必ずと言ってよいほどこの魚がいる。犬歯(正しくは犬歯状歯と言うみたい)の目立つ顔つきは獰猛で、この顔の通り大きなルアーにも飛びかかるようにして食いついてくる。

ロクセンフエダイ。海草の多い遠浅の浜ではこの魚の幼魚がよく見られる。海底の砂をふわりと巻き上げると、なんだなんだと駆け寄ってくる姿が愛らしい。漁港の餌釣りでもサンマの切り身によく食いついてくれる、おそらく好奇心の強い魚。

イッテンフエダイ。海草/海藻っ気のない岩礁の浅瀬でよく出会う。口先がシュッと尖ったシャープな体型で、小さなルアーをよく追いかけるけれど最後の最後で慎重なのか、なかなか食いつきはしない。他の仲間と違って成長段階に応じて生息環境を変えるということをあまりしないのか、ひとつの場所でごく小さな幼魚から比較的大きめの若魚までが混在していることが多い。

ナミフエダイ。漁港の岸壁沿いで1尾だけ釣れたことがあるのだけれど、それ以外は水中でも出会ったことがない。その物珍しさでの贔屓分を差し引いても、僕が見たこの仲間の幼魚の中ではずば抜けて美しかった。飴色の体に小さな水色の斑点がキラキラ散りばめられて、海へ還すのが惜しくて何枚も写真を撮った。

バラフエダイ。スズメダイの仲間に擬態しているのは一目瞭然。背中の白い点も尾びれの黒い線も、実にスズメダイっぽくよくできている。海の中で出会ったときには徐々に大きくなりつつある個体だったせいか、行動パターンはスズメダイより一匹狼系で堂々と振る舞っていて、将来大きな肉食魚になる気配、貫禄が十分だった。

オキフエダイ。魚食魚の顔つきをしたものが多いこの仲間の中では、ロクセンフエダイと並んで柔和な顔つきをしている。水の中で出会ったことはないけれど、漁港の餌釣りではこれもサンマの切り身好き。仕掛けにわらわらと近寄ってくるのがよく見える、愛らしい魚。

* * *

かれらをこうやってずらりと並べるようにして見られるなんて、改めてこの多様な石垣の海に接していられることの幸運を実感する。第2弾を描くのが今から楽しみ。


 
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2016年08月26日

ホシミゾイサキ Pomadasys argenteus

Pomadasys argenteus

子どもの頃から魚が好きで、よく図鑑を眺めて過ごしていた。だから、さすがに研究者の方のようにはとてもいかないけれど、初見の魚でもある程度は類縁関係の想像がつく。形態を緻密に見てというよりは、全体の雰囲気とか表情とかひれの感じとか泳ぎ方とか質感から「あれの仲間だ」と当たりをつける、素人の感覚的なものだ。

その感覚にはそれなりに自信があったのだけれど、この魚については「からきし」だった。ホシミゾイサキ。これが類縁関係のまるでないキチヌの類にとてもよく似ている。ネットや図鑑で見ると確かにタイの仲間とは少し顔つきも体形も違うのでちょっとがっかりするのだけれど、釣りあげられた幼魚がピチピチ跳ねるのを見ていると、分かっていても「あれ?今回こそはキチヌの子かしら」と思うほど似ているのだ。
南方の魚だから大阪や東京近郊の釣りでは出会うことがなかったし、鮮魚としても見たことがない。そういえばこの字面にはうっすら覚えがあるような…という程度の馴染みのなさだったから、つい先日客人Oさんの息子さんが釣り上げたのを見て、ガイドOさんが「ホシミゾイサキだ!」と声を上げなければ、僕はすんなり「オキナワキチヌの子が釣れた」と思っていたかもしれない。

そういえば石垣島に越してまもなくの頃、こちらでお世話になっている写真家のNさんが「こっちの河口域にいる、『ガクガク』と呼ばれるチヌっぽい魚」の話をされていたのを思い出した。僕はそのときチヌっぽい汽水魚と聞いてクロサギの類の何かのことかなと思っていたのだけれど、それどころじゃない、もっと本当にチヌっぽい魚なのであった。その通称のとおり、釣り上げると喉のあたりから音を発する。幼魚は河口域で小さなソフトルアーをよく追い、とても愛らしい。


 
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