2012年07月27日

コショウダイ Plectorhinchus cinctus

Plectorhinchus_cinctus_120727


コショウダイの仲間は世界各地に30種以上、体型は微妙にまちまちながら皆おしなべて体高とひれの形・大きさのバランスが良く、色や模様も種や成長過程によってさまざまなバリエーションに富んで見ていて楽しい。

チョウチョウウオやヤッコにはいかにも観賞魚然とした華々しさがあるけど、コショウダイたちは体格の立派な食用魚が色とりどりの模様を身に纏ったような面白さがある。決して可憐じゃない。英名は彼らの特徴である分厚くて可愛らしい唇から"Sweetlips"と言うようだけれど、老成するほどにその唇も含め迫力のある顔つきになる。だからかっこいい。

日本にも数種類いるけれど、もっともスタンダードたるコショウダイPlectorhinchus cinctusは、色と模様に日本らしい渋みのある魚。子供のころはひれに黄色みがあって、身体の胡椒柄も大きく粒胡椒のようになっていて愛らしい。大人になるとその胡椒は次第に挽かれて粗挽き胡椒になり、色みもチャコールグレー〜紫がかった落ち着いたものになる。

身は刺身で何度か食べたことがある。甘みのある、しっとりとキメの細かい白身。おいしい。

15センチくらいの子どもを何度か釣ったことがあって、その色、華々しく立ち上がった背びれ、少し分厚い墨色の胸びれ、なんとも洒落た全体像に惚れ惚れとした。えらを膨らませた顔つき、ピンと張ったひれ、力が入ってくるんと反った尾。こういう魚を目にすることには、すばらしい色づかいの絵画や美しい人の姿を眺めるのと同様に、鋭い「見る快楽」がある。


posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜