2014年06月27日

マサバ Scomber japonicus

Scomber japonicus_140627

サバが好きだ。かれらにはいろいろといい思いをさせてもらってきた。

初めての釣りは父と行った福井県の三方五湖。ピクリともアタリの無かった夜釣りの翌朝、近くの漁港で打って変わって入れ食いだったのが小サバだった。まるで柳の葉のように細くて薄い魚体が、オレンジっぽい朝陽を受けて銀色に光る姿がとっても綺麗だった。かれらに出会わなければ、その後父子で数年にわたって釣りに熱中することはなかったかもしれない。

ひところ、兵庫県は武庫川沖の一文字防波堤へよく釣りに行った。わざわざお金を払って船で渡るのだけど、魚影の濃さはその見返りにふさわしかった。夕方、太陽が傾いて海が黒々と陽の光を拒むころになると、海面を埋め尽くすようなサバの大群がバシャバシャと背中を露わに堤防周りに押し寄せてくる。太々と肥えた重たいサバを引きずるようにして釣り上げて、クーラーボックスいっぱいに持ち帰った。滑らかな腹をプクリ、と割いて、よく脂の巻いたはらわたを抜き取り、小骨の切れるプチプチという音を心地好く手に感じながら三枚に卸す。母に教わりながら作るでこぼこの昆布〆は、当時いろいろ挑戦した釣魚料理の中でも一番の味だった。

そうしてサバを好きになって、スーパーの鮮魚コーナーが楽しい場所になった。たいていはサバを置いてあるから、行くたびに背中の虫喰い紋をあれこれ見比べてみる。紋は種によって違うし(流通しているサバには主に3種ある)、同じ種でもけっこうな個体差がある。深みのある青や緑に浮かぶ紋に見入っていると、陶磁器を愛でる愛好家の気持ちすら分かるような気がしてくる。


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2014年06月20日

カタクチイワシ Engraulis japonicus

Engraulis japonicus

カタクチイワシというとちょうど2年前の夏、中高の同級生で今はごく近所に住んでいる友人に連れられて手漕ぎボートの釣りに行き、調理がちょっと憂鬱なほど沢山釣れたのを思い出す。その時も絵を描いた。ボートの上から海面までの距離はとても近くて、口を大きく開いたまま体をくねらせて海面直下を走り回る姿がよく見えた。えらぶたを開いたその隙き間から、櫛の歯状になっているえらまでもがはっきりと見えていたように記憶している。

さかのぼれば父との釣り、忠岡港で灯りに照らされた夜の海面で渦巻く無数の青黒い背中。タチウオがかれらに襲いかかってキラリと刀身を光らせるのが見えて、タチウオ狙いで海に浮かべている電気ウキをドキドキしながら眺めていた。あるいは、岸和田沖に浮かぶ一文字防波堤でのサビキ釣り。黄金色のアジに混ざって白黒ツートンカラーの細い魚体がピチピチ跳ねながら上がってきた。

煮干しや田作りのイメージが強くて、ついつい5〜6センチの小魚だと思ってしまうけど、釣れるカタクチイワシたちはもっと大きくて、しなやかな筋肉を意外なほどしっかりと身に纏っている。握ると手の中でブルブル震える感触が逞しくて愛おしい。か弱く見えてもしっかり生きてるな、と思う。そしておいしい。小さくて数釣れるから正直なところ調理はやっぱり面倒臭いけど、透明感のある身を開いて並べる作業はその後の恩恵を思うとそれなりにワクワクする。


 
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2014年06月13日

カサゴ Sebastiscus marmoratus

Sebastiscus_marmoratus_animation_700px
静止画版はこちら

ここ数年東京近郊で何度か防波堤釣りをして、ボウズもあればそこそこ釣れたのもあったけど、いつも心のどこかで期待している「カサゴ」は今のところ一尾も釣れていない。小学生のころ父と一緒に大阪湾のあちこちを巡っていたときには最もよく目にした魚だったから、なかなか出会えないのがもどかしい。当時愛用していた岸壁際落とし込み用の「短竿」と「リール」が手元に無いせいじゃないか、と思っている。「三本針の胴突仕掛け」と合わせて、数々の小魚を仕留めたあの三種の神器さえあれば…!!

しなやかな短竿にアタリがくる。左手でぐい、と竿をしゃくって合わせて、キリキリとリールを巻く。足元のトロリとした深緑色の海から、赤いカサゴが上がってくる。カサゴは何と言っても、釣り上げられたときの姿がいい。他の小魚のようにぴちぴち跳ねたり暴れたりしない。えらと胸びれをいかめしく突っ張らせ、尾びれを反らせて微動だにしない姿は、歌舞伎の見得によく似ている。防波堤のコンクリートの上に横たわると、時折バクリ、と口を大きく動かす。

大阪湾でたくさん釣ったカサゴの中でも特に思い出深いのは、南港は「かもめ大橋下」と呼ばれる釣り場での一尾だ。海水魚の水槽を増やしたいんやけど…というお伺いに両親からOKが出て、水槽のセッティングを済ませてから中身を釣るべく勇躍出かけた日だった。
飼うのにぴったりの魚を釣るのは意外に難しい。大きすぎては窮屈そうな姿を見るのが辛いし、傷に弱い魚は調子を崩してすぐに死んでしまう。泳ぎ回る魚も狭い水槽では申し訳ない。そういった条件を鑑みると、「小さなカサゴ」というのは打ってつけだ。その日初めてのアタリで海から上がってきたのはまさにそんなカサゴで、口を傷つけないように慎重に針を外して大事に持ち帰った。その10センチに満たない小さなカサゴが見得を切って上がってきた時の嬉しさは、今でも色褪せずによく憶えている。


 
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2014年06月06日

ネンブツダイ Apogon semilineatus

Apogon_semilineatus
ネンブツダイ Apogon semilineatus とクロホシイシモチ A. notatus

友人2人に連れてもらって、南房へ釣りに行った。防波堤だよ、と聞いて小躍りするような気持ちで待ち遠しく当日を迎える。乗合船やボートの釣りももちろん楽しいのだけれど、それらは東京で知った大人の釣り。防波堤は幼い頃に父と一緒に巡った大阪湾のあちこちを思い起こさせて、やはりいつまでも特別なものなのだ。

未明に着いた相浜港ではポツリポツリの釣果のみ。大物を狙った友人たちも思わしい結果がなく、場所を浜田港に変えることに。少なくとも私にとってはそれが大当たりで、そこは小魚たちの宝庫だった。群れをなして泳ぎ回る小サバや何かの青物の仔。水面直下に浮かぶ3cmほどのハゼらしき縞模様の小魚。目を凝らすと、海底近くを滑らかに舞うベラのような細長いシルエットも見える。

そして、愛らしく美しいネンブツダイたち。堤防の曲がり角で入れ食いになった。仕掛けを沈めると群がって餌に食いついてくるのが見える。
立て続けに釣り上げて持参のプラケースで都度写真を撮っていると、時折少し色味の渋いものが混ざった。アゴの先端が黒くなっているのが、釣り針を外すときによく目立つ。婚姻色の出た雄かな、などと思っていたのだけれど、家に帰ってから別種だと知った。クロホシイシモチ。顔も体もネンブツダイより少しいかつい。

日ごろ鈍い色の東京湾しか目にする機会がないので、南房の海の透き通った碧さは眩しかった。釣果は指を除いた手のひらにも満たないような小物ばっかりだったけど、瀬戸内にも似た多様で豊かな魚影を存分に楽しんだ一日だった。


 
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