2018年05月19日
カンモンハタ Epinephelus merra
場所によっては過半数の個体にイカリムシモドキの寄生が見られる(背びれ下2か所、腹びれの付け根1か所の黒くて細長いもの)
「長嶋さん、リーフの釣りは楽しいですよ。魚と水平に引き合うのは、上下に引き合う釣りとは少し違う体験です」−3年前の夏、僕を石垣島への旅行に誘ってくださった首藤さんがそう言った。その首藤さんがくださったご縁をきっかけに僕は石垣島へ移り住むことになり、いま、その言葉の意味を日々実感している。浅いリーフに足を浸けて、水の温度や岩のごろごろを感じながら魚と引き合っていると、自分と相手の魚というふたつの「個」が、同じ土俵でやりとりしているという気がしてくる。地上の人間が水中の魚を釣り上げるという対比ではなく、同じ水中でやりとりする彼我という構図。
そんなリーフの釣りでもっとも見慣れた顔が、このカンモンハタだ。岩場やサンゴの群落があればそこには必ずこの魚がいると言っても過言ではないし、獲物と見れば隠れ家から矢のように飛び出して食いつくので、ルアーが下手でも向こうから針に掛かってきてくれる。正直なところ、もはやカンモンハタという種に対する新鮮な感動はないのだけれど、この魚の面白さは個体変異の大きさにある。体色の濃いもの、薄いもの。網目模様が大ぶりなもの、細やかなもの。ハタとしては小ぶりでせいぜい25センチ前後だけれど、ときおりグンと体高のある立派な体つきのものがいるし、尾びれの先が微妙にギザギザと伸びるものもいる。この個性の多様さは、魚との「個」のやりとりというリーフの釣りの愉しみととても相性がいい。だからグンというアタリの後、大きな口を開けたこの魚がパカリと水面を割ると、またかと心の片隅で思いながらも肖像写真家のような気分で何回もシャッターを切ることになる。
posted by uonofu at 11:16| Comment(2)
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