
(上)モツゴ Pseudorasbora parva 頭部にイカリムシが寄生した個体
(下)タモロコ Gnathopogon elongatus elongatus
子どもの頃、大阪市内の公園の池で父と一緒によく魚をすくった。パンの耳を放るとそれを突っつきに小魚が群がってくるので、網で水面を削るようにザッとすくう。運動神経の良い父は膝のバネと瞬発力を活かして、魚がパンの周りに一番集まる瞬間を逃さなかった。うまくいくと一度に7、8尾が白い腹を見せて網の中でピチピチ跳ねた。
黄色い背表紙がトレードマークの小学館『魚貝の図鑑』で調べて、その小魚が「カワバタモロコ」か「モツゴ」ではないかと当たりをつけた。図鑑の絵を見る限り前者の方が可愛らしくて品が良かったので、こっちだといいなと思った。実際、色やラインの入り方からしてカワバタモロコが有力そうに思えたのだけれど、後にどうもモツゴであるらしいと分かった。カワバタモロコは絶滅危惧種で、市内の池にわらわらと群れているような魚ではなさそうだったし、魚の顔に見慣れたことである程度は顔つきの違いが見分けられるようになったからだ。
この夏、岡山への帰省時、実家脇の川でモツゴとともにタモロコが網に入った。20年の時を経てようやくモロコと初対面か!と思っていたら、カワバタモロコとタモロコは同じ「モロコ」の名を負っていてもさほど近い仲間ではないらしい。それでも昔図鑑の絵を見て感じた品のいい愛らしさはこの地味なタモロコにもあって、改めて日本の川の魚たちの魅力を認識した。
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