“セイゴ”ことスズキ Lateolabrax japonicus の若魚
岡山県備前市の日生(ひなせ)港で釣りをした。
日生は牡蠣の街だ。駅から港までの15分ほどの歩きの間に、地元の名物カキオコ(牡蠣入りのお好み焼き)の幟が立っているお店を何軒も見かけた。
港は小さくて、漁協や直売所の脇を抜けて少し歩くともう海に面して行き止まる。さっそく竿を出すと、水深はわずか1メートルほど。浅い所に魚がいないわけではないし、実際水面下にはボラやサヨリが群れているのだけれど、どうも釣れる気がしなくて腰を据えられない。
すると背後の水産加工場から白い作業着姿のおじさんがすたすたと出てきて、加工場からの排水が海に流れ込むポイントで昨日は大きなセイゴが釣れていたから、と教えてくれた。排水に牡蠣の破片が混じっているのを食べにやってくるらしい。
教えられた通りに移動すると、再びそのおじさんがやって来て「これ餌にしてやってみ」と牡蠣の剥き身を6、7粒、ポイとくれる。このまま針に掛けるんですか?と訊くと、そうそう大きい口でパクッといくから、という返事だ。
セイゴを牡蠣で釣るとは聞いたことがない。ほんまかな、と訝しみながら、小物狙いの小さな針には不釣り合いな大きさの剥き身を針に掛けて仕掛けを沈める。地元の人らしき野球帽のおじさんが隣にやって来て、やはり牡蠣を餌に仕掛けを垂らすのを見ると、ここではこの釣り方がスタンダードらしい。
いっこうにアタリが無いままぽかぽか陽気に居眠りしていると、隣のおじさんが素早く立ち上がる気配に目が覚めた。竿が大きくしなっている。白い腹を見せながら足下の海を左右に走って抵抗した後、スポンと釣り上げられたのはおそらく40センチ近い立派なセイゴだ。
ほんとに釣れるんだ、と改めて自分の竿先に意識を向ける。すると立て続けに二度、アタリだけを残して牡蠣を食われてしまった。おじさんのセイゴを見る限り明らかに針が小さすぎる、と以前船釣り用に買っていた14号の大きな針に仕掛けを変えると、すぐにブルブルとアタリがきた。おじさんのに劣らない大きなセイゴだった。
手持ちの小さなバケツにはとても入らないので、仕方なくコンクリートの上に寝かせて写真を撮る。
下顎の突き出しが強烈で、こんなに獰猛な顔つきだったかと改めてまじまじと見た。バタバタ、ズリズリと暴れる音は久しく聞いていなかった大物のそれで、心地好く手に残るヒキの感触とともに「大きな魚を釣りたい」というごくシンプルな欲求を掻き立てた。
結局釣れたのは他にやや小ぶりのセイゴと小さなクサフグで、そのすべてが牡蠣の餌に食いついたものだった。人も魚も、その土地土地のものを食べて生きてるんだ、と実感させられた釣りだった。

私はハネサイズにはお目にかかったことがありません。。
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