2014年12月19日

オールドファッションなテトラたち Old-fashioned Tetras

old-fashioned tetras
(左上) ヘッドアンドテールライトテトラ:複雑な色彩が美しいのだけれど、一見地味
(左中) モンクホーシャ:水草齧りで有名、老成すると意外に大きい
(左下) サーペテトラ:気性が荒く、他魚のひれを齧る
(右上) ブラックテトラ:老成すると意外に大きく、色彩もぼやける
(右中) グローライトテトラ:水草水槽との相性はいいが、地味なため主役にされにくい
(右下) レモンテトラ:水草齧りで有名、ショップでは地味で見過ごされがち


人に消費される他のすべてのものと同じように、熱帯魚の世界にも流行り廃りがある。

異論は数多あるだろうけれど、「ネイチャーアクアリウム」のコンセプトがアクアリウムの最高峰の一つに君臨する*以上、今の流行は見た目・性質ともに水草レイアウト水槽と相性のよい小型美魚たちだ。鮮やかなグリーンをバックに映え、同居魚たちに危害を加えず、水草を齧ったり引き抜いたりすることもなく、あわよくばコケやスネールのような「不純物」を積極的に食べてくれる―それらが今、「愛され魚」になるための条件だ。ここ十年ほどの間に現地採集や品種改良によってもたらされた数々の「新商品」の中でも、ネイチャーアクアリウムにお誂え向きのこれら小型美魚たちは、高い商品価値とともに市場に生き残っている。
*「ネイチャーアクアリウム」のコンセプトについてはこちらに。

その一方で、網羅的に多くの魚種を扱っている熱帯魚店へ行けば、二十年以上前から決して変わることのない顔ぶれも目にすることができる。古典的、とも言えるそれらの魚たちは、流行り廃りに縁が無いどころか、一部は「流行らない」要素を備えてすらいる。気性が荒く同居魚に危害を加える。水草の新芽をせっせと齧ってしまう。老成すると意外に大きくなる。ただただ地味(別の言い方をすれば水草をバックに渋く映えるのだけれど、見慣れすぎた姿のため美しさに気付けない)。

流通している魚種が今よりもずっと少なかった時代と違って、今はわざわざそれらの「欠点」を抱えた魚に手を出さずとも、他にいくらでも魅力的な魚たちを手に入れることができる。それでもかれらが熱帯魚店から姿を消さないのは、養殖技術と流通ルートが確立されていて機械的に供給されるという側面もあるだろうけど、何よりかれらを「かわいい!」とか「きれい!」とか思って買うアクアリストがいるからだ。

美しい水景を創るため、相応しいものだけをその住人として不純物を取り除く―アクアリウムにおいてそれは何ら間違ったことではないと思うし、自分自身もそうやって水槽を維持している。けれどもそこに何やら優生思想めいた不穏な気配を感じてしまいもする中で、一癖抱えたこれらのオールドファッションな熱帯魚たちとの一期一会から長い付き合いを始めるアクアリストの姿を思うと、熱帯魚を飼い始めた頃の自分自身を思い出して、心が洗われるような気がする。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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