2015年06月05日

スルメイカ Todarodes pacificus

Todarodes_pacificus

釣り餌においてはゴカイであれエビであれとにかく「活き餌」に勝るものはないと思っていたけれど、活き餌を入手できず仕方なくイカの塩辛で臨んだ函館での釣りでアイナメを釣り上げて以来、塩辛は状況によっては活き餌を上回るのではと思うようになった。千葉の鵜原港ではフグたちに大人気だったし、伊豆の稲取港で生まれて初めてのムラソイを釣り上げたのも塩辛だった。だから近頃は釣行の日が近づくと近所の「西友」でスルメイカを買ってせっせと塩辛を作る。お野菜に関してはどちらかというと品質よりも安さ優先の感がある西友だけれど、なぜかスルメイカはいつもぷっくり太った新鮮なものが並んでいる。頭をつかんで引き抜くと細長い袋状の器官に詰まった「わた」が出てくるので、身の半分を千切り的に刻んだものと和えて適当に塩を振って出来上がり。残りの身と頭周りの軟骨とゲソは冷凍しておいて、日曜日のお昼か飲んだ後の「締めのパスタ」病に罹ったときのスパゲティの具にする。料理の下ごしらえと釣り餌づくりを兼ねた楽しい作業だ。

椎名誠さんは初期のエッセイ(『かつをぶしの時代なのだ』だったと思う)の中で、タコの水陸両用的な不気味さと比較して、水から揚げられたイカを“ひっそりと伏し目がちで奥ゆかしい”というように書いておられた。確かにタコには悪役モンスターの趣がある。けれどもイカの「異世界感」もなかなかの不気味さだ。タコはギリギリのところで話が通じそうな感じがする(だから鉢巻姿で擬人化されるんだと思う。実際3歳児なみの知能があるとも言うし)けど、イカはきっと人語を解さない。やけに白黒はっきりとして焦点の定まらない◎の目で、頭の上の10本の腕をクネクネ振り回す姿は宇宙人的だ。そういえば「わた」をたっぷり詰め込んだあの袋状の器官は表面がメタリックグレーに輝いて、どうにも宇宙服を彷彿させるではないか。


posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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