2015年06月19日

キタマクラ Canthigaster rivulata

Canthigaster_rivulata

防波堤最強の「エサ盗り」は、このキタマクラだと思っている。

「魚信(アタリ)を残さない」のがかれらの流儀だ。仕掛けを沈めると同時に竿先に微妙な反応があり、それっきりウンともスンとも言わないので巻き上げてみると、綺麗にエサがなくなっている。そういうのはたいていキタマクラの仕業だ。エサどころか、糸を噛み切って針ごと持っていってしまうことも珍しくない。

同じフグでもクサフグやヒガンフグといったタキフグ属の面々は、釣り人がイメージしているほどには実はエサ盗りがうまくない。魚信も残すし結構な頻度で針にも掛かる。釣り上げられるとグシグシ言いながらせっせと膨らんでいく。そんな姿は実に愛嬌たっぷりだけれど、キタマクラにはあまり可愛げがない。古代文明のお面のようにグラフィカルな模様をまとった無表情な顔に、ガラス玉みたいな目をキョロつかせて、とにかくパワフルに暴れる。「しくじり慣れ」していないと、しくじった時の振る舞いに余裕がなくなるのかな、と思わせるような暴れっぷりだ。

3つのポイントが、かれらの高度なエサ盗り技術を支えている。エサや糸を噛み切る強靭な歯。コンパクトカーみたいに無駄なく小回りの利く丸い体型。前後上下左右、自由自在に滑らかな泳ぎを生む引き締まった筋肉。特にこの筋肉はタキフグ属との大きな違いだ。手にしたときの太さ、固さ、重さがまるで違う。「北枕」なんて物騒な名前を聞かされてはとても食べる気になれないけど、さぞコリコリとしたいい白身だろうと思う。

そんな、釣り場で顔を見ても「おおよしよし」とはなかなか思わない魚なのだけれど、この魚がいる海は岩礁帯で豊かであることが多いし、海によって色や模様が違うという面白さもある。特に静岡県の網代で釣れるキタマクラたちは、腹部から尾びれにかけてが目の覚めるような深く鮮やかな青に染まってとても美しい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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