
カサゴやメバルのように、「根」と呼ばれる岩礁に居着く魚の多くは、釣り人の多い海からは見る見るうちに姿を消してしまう。
どのようなプロセスでそれが起こるかというと、まずは釣れる魚がどんどん小型化する。良い根は大きくて競争力のある個体が占め、それが釣られてしまうと次に強い個体が代わりにそこへ居着く。競争力はほぼ魚の大きさに比例すると考えれば、それが繰り返されることで根に残る魚は次第に小さくなってゆく。10年前はここで大きなカサゴ・メバルが入れ食いだったけど最近は小さいのばっかりだ、という釣り人の嘆きは、武勇伝を大きく語りたがる気質を差し引いたとしても、事実だと考えてほぼ間違いない。
それでも次々に「補充」が利けば、魚の数や大きさは保たれる。ところが根魚の類は成長に時間がかかるため、若い個体が釣られてリリースしてもらえないとなると個体数の減少に歯止めが利かない。そして姿を消してゆく。たかが釣り人がちょっと釣ったぐらいで…と見る向きもあるけれど、関東近郊の人気の釣り場は休日ともなると岸壁にずらりと釣り人が並んで糸を垂れる。その海の中を想像すれば、根魚があっという間に根絶やしになってしまうことにも納得がゆく。
子どもの頃から根魚が好きなので、カサゴやメバルに出会えない海での釣りをつい不毛に感じてしまう。かれらが心地好く竿を震わせてくれる釣り荒れていない海を求めて、何時間も電車に揺られたり、駅から延々自転車を漕いだりしている。カサゴの顔を見ると、この海はまだ大丈夫だと胸を撫で下ろすと同時に、ここも次第に釣り荒れてゆくのだろうかと不安になる。