2015年09月18日

オウゴンムラソイ Sebastes nudus

Sebastes nudus

旅先で空き時間に釣りをするとき、最大の難関はエサの調達だ。ルアーの使い手ならばそこで悩む必要はないのだけれど、残念ながら自分が操るルアーのことはちっとも信じられないので、気持ちよく釣りをするためには何かエサになるものを手に入れなければならない。

11時を回った夜更けの函館でエサを調達するには、コンビニぐらいしか手段がない。イカの塩辛があれば最高なのだけれど、駆け込んだローソンの棚には、残念、値札が残るのみだった。深夜の晩酌のお供に、誰かが買っていってしまったらしい。仕方がないのでチクワを買う。細切りにして、何ならコンビニ袋を裂いたものをちょっと結びつけて…などと考えるが、それなら最初からソフトルアーにすればいいじゃないか。

そんな迷いは、次に立ち寄ったセイコーマートで発見したイカの塩辛によって解消された。小躍りしつつ、小走りで住吉漁港へ向かう。平日の深夜、当然ながら人気はない。懐中電灯で海面を照らすと、何やらはっきりとは見えないけれど銀色の平たい魚が岸壁沿いを泳いでいる。はやる気持ちを抑えつつジグヘッドに塩辛を刺して沈めると、期待に反してまったくの無反応。突っつきもしない。そして底の様子は、どうも根魚たちがあまり好まない砂底らしい。函館の南東に美しく伸びる砂浜の端に位置する漁港だから、それも当然のことだ。迷った挙句、春にアイナメを釣った函館港側へ移動することにする。

移動と簡単に言っても、函館を構成する陸繋砂州を北東側へ横断するのだからそれなりの距離だ。左前方に見えていた箱館山の山頂がいつの間にか背後にまわる約2.5キロ。翌朝も早いのだからあまり夜更かしするわけにもいかない。人気のすっかり絶えたガランと広い道を、息を切らせながら走って移動した。運動は苦手なのに、釣りとなると深夜のジョギングもまるで苦にならない。

3月末以来、5カ月ぶりの函館港は、やっぱり魚たちが群がるようにして迎えてくれた。アイナメのポイントが近づくと、それまで反応なく底まで沈んでいたイカの塩辛が、海面から2メートル足らずのところでガツンとひったくられた。それからはクロソイが入れ食い。真っ暗な海の中で岸壁から少し距離を保って、やや頭を上に向けてホバリングしながら大きな目でぎょろりとエサまでの距離を測っている姿が目に浮かぶようだった。海面を照らすと、赤い光がUFOのように滑らかに泳いでは止まり、を繰り返している。小さなイカがわんわんと唸りを上げる蚊柱のように飛び交っているのだ。

クロソイに混じって、幸運にもこのオウゴンムラソイが一尾だけ釣れた。絶対的な個体数にも差がありそうだけど、それよりオウゴンムラソイはクロソイのように群れてホバリングするということはしなさそうだから、クロソイの活性がこの夜ほど高いとなかなかかれらにまではエサが届かないはず。そんな中で初めて出会えたSebastes属の新顔が嬉しくて仕方なく、引き揚げる直前までバケツに泳がせてたくさん写真を撮った。その名の通りの黄金色の鱗が、手の中で懐中電灯に照らされて夢のように美しい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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