
日本ではナマズといえば普通の「あのナマズ」をイメージするけれど、世界を見渡せばナマズ目は3,000近い種からなる大所帯で、見た目も生態も実に多種多様。ただ海に棲むものは少なくて、Wikipediaによれば120種ほどしかいないらしい。3,000種のうちの120種。そんなナマズ界の異端の一種がこのゴンズイだ。
胸びれと背びれに毒があって、刺されるとひどく痛むらしい。ぬらぬらとした見た目に似つかわしく夜行性で、夜釣りをしていると立て続けにゴンズイばかり釣れることがある。食べると相当おいしいというけど、毒と見た目のせいか釣り人には人気がない。初めてゴンズイに出会ったのは千葉県の相浜港での夜釣りだったのだけれど、夜が明けてみるとそこここに釣り人が捨てて帰ったゴンズイの、哀れな生乾きの死体が転がっていた。
かくいう僕自身も、先日愛媛で夜釣りをしたときには随分とゴンズイの顔を見て、もういいよ、と次第にウンザリしながらとりあえずの写真を撮ってポイと海へ返していた。夜釣りの写真は懐中電灯の光を反射して魚がやたらギラギラ、テカテカするので美しくない。そうしてぬらぬら感が増幅したゴンズイの写真ばかりが手元に残っていたのだけれど、ふと思い立って相浜港で初めて出会ったゴンズイの写真を見返してみた。初対面が嬉しくて、夜が明けるまで待ってからきちんとプラケースに泳がせて写真を撮っている。そのゴンズイのフォルムと色のあまりの美しさに驚いてしまった。ゴンズイとはかくも見目佳き魚であったか。次に出会った時には、夜明けを待たないまでも懐中電灯の光の下で、バケツの中の泳ぎ姿を楽しんでみようと思っている。