2015年12月04日

クジメ Hexagrammos agrammus

Hexagrammos_agrammus

小学生の頃、父とはよく「泉南」と呼ばれるエリアで釣りをした。その名の通り大阪府の南の方、長靴で言えば足の甲からつま先にかけての部分だ。行きつけは近い方から順に泉大津、貝塚、泉佐野とあって、そのうち貝塚の大きな人工島の先端の長い突堤でアイナメに交じってこのクジメがよく釣れた。

アイナメとクジメ、この両者はよく似た姿をしている(アイナメの姿はこちら)。
もっとも簡単な見分けは尾びれの後縁の形だとされている(アイナメは直線的、クジメは緩やかに円く張り出している)ほか、側線(体の側面にある感覚器官)の数にもアイナメが5本、クジメが1本という違いがある。

けれどもそれらはあくまで確実に見分けるための識別ポイントなのであって、かれらの違いを「楽しむ」ならば、尾びれを見てうーんと唸ったり(尾びれを閉じていると案外後縁の形は見分けづらい)、側線に目を凝らす必要はない。ゲシュタルトとしての体つきと顔、それに色を見るべきだ。

アイナメはクジメより大きくなる魚なだけあって、たとえ若い個体でも将来的に立派な体格になることを予感させるボリュームがある。対するクジメは小作りで引き締まった印象。たとえるならば、日本人のマラソン選手がクジメ、ジャマイカの短距離走選手がアイナメということになる。

顔つきも違う。アイナメは唇が大きいので口先がやや丸みを帯びて見え、クジメに比べればおっとりしている。ただし、その丸さが老成魚ではぎょっとするような迫力に変わる。大きくなる魚が年老いると表情に独特の生臭さを帯びてくるのはマダイなんかも同じだ。対して、クジメは口先がシャープで、目と口の距離も近いのですばしこい印象。小学生の頃、小柄で活発な子はこういう顔をして目をきらきら光らせていた。

あとは色。これは岩場や藻場に生息する魚の通例として個体ごと・場所ごとの色彩変異が大きく一概には言えないけれど、アイナメは黄みや橙みを帯びた茶色、クジメは赤みやえんじみがかった茶色のものが多い。おそらく、同じ場所でも何らかの棲み分けをしていて、それが体色に表れているのだろうと思う。

釣り人がクジメを話題にするときは、尾びれの形・側線数の識別ポイントに、「アイナメに比べておいしくない」というガッカリ情報がついてワンセットになっていることが多い。でもがっかりするために見分けるのではなく、アイナメとの違いをのんびりと鷹揚に眺めてみれば、手の中で跳ねるクジメがもうちょっと魅力的に見えてくるかもしれない。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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