2015年12月11日

ヒノマルテンス Iniistius twistii

Iniistius_twistii.jpg

「日の丸」の象徴的な意味を云々するつもりは一切ないのだけれど、やっぱりこの魚を初めて知った時におお、と思ったのは、単に思い切りのいい奇抜な柄だからというだけではない。白ごはん+梅干しの取り合わせを「日の丸弁当」と呼ぶぐらいにはこの意匠を一つの類型として認めている、それもオーセンティックなものとして認めている社会にあっては、この魚にプラスの意味を込めて「ヒノマル」の名を冠するのはごく自然なことだ。

ただ、当の本人は当然ながらそんな意図でこの模様を纏っているのではない。僕は海に潜って魚を見た経験がほとんどないのであくまで動画や写真からの想像だけれど、ある程度深さのある海においてこの魚の姿は相当視認しにくいだろうと思う。「白ごはん」部分は海の蒼さに押し込められた海底の白砂とほぼ同じ色になるはずだし、「梅干し」部分は黒く沈んだ色になって、海底に点在する岩や貝殻に紛れ込んでしまうに違いない。
竹富で聞いた話を思い出す。マトフエフキという魚は、その名の通り「的」になりそうな目立つ黒点が体側に染め抜かれているのだけれど、浅いサンゴ礁の海中ではその的そのものが小さなスズメダイの泳ぎ姿に見えるそうだ。ひょっとすると、それで他の生き物を油断させて捕食の成功率を上げているのかもしれない、と。

釣り上げたり鮮魚店に並べたりしてみれば、なんでこんな奇抜な柄になったんだろうと思うような魚は他にもたくさんあるけれど、きっとそこには無駄がない。そうして打つ手が功を奏した者だけが生き残ってきたのが海なのだと思えば、この「日の丸」も生々しい凄みを含んだ、この種の執念そのもののように見えてくる。


posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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