2016年01月01日

「出世魚」 "Shusse-uo"

shusseuo
上から “セイゴ”(スズキ Lateolabrax japonicus の若魚)
“ツバス”(ブリ Seriola quinqueradiata の若魚)
“イナ”(ボラ Mugil cephalus の若魚)


成長とともに呼び名の変わる出世魚。その変わり方には一つのパターンがあって、未成魚の何段階かは地方によって異なる呼び名なのだけれど、最終的な成魚はどこも同じになる。たとえば「ブリ」だと
関東では:ワカシ→イナダ→ワラサ→ブリ
関西では:ツバス→ハマチ→メジロ →ブリ
東北では:ツベ→イナダ→アオ→ブリ
といった具合に(いずれもWikipediaより)。

このパターンが、実は人間の学術的な努力の痕跡だということをつい最近知った。少し考えれば当たり前のことかもしれないけど、未成魚のうちは地方によってさまざまに呼ばれていたものが、成魚になって突如全国どこでも同じように呼ばれるということは偶然にはありえない。これは、魚種ひとつひとつに学術的な標準和名を付けてゆくという取り組みの結果ということらしい。ある地方におけるワカシ、また別の地方におけるアオという魚が、いずれもひとつの魚の異なる成長段階を指すことを明らかにし、それを成長段階にかかわらず「ブリ」であるとまとめたのだ。だからどの地方においても成魚という「完成形」においてはブリと呼ばれることになる。

これは大変な労苦を伴う一大事業であったに違いない。「名付け以前」ののっぺりとした世界に人類が名前をつけて切り分けていった作業の果てしなさは何度も想像したことがあるけれど、その切り分けが既に同時多発的になされている世界でそれをまとめ直してゆくことには、きっと異なる困難がある。事物だけでなく、人間の認識やその表れとしての文化にも向き合わなければならないからだ。

何気なく眺めていた出世魚の名前にも、人間が積み重ねてきた叡智の跡がにじんでいる。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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