2016年01月22日

ナマズ Silurus asotus

Silurus_asotus_160122
スゴモロコを餌に、小ブナを襲っていたナマズの1尾を釣り上げた。成長途中で何かに襲われでもしたのか、尾びれがなかった

岡山の妻の実家に帰省すると、実家脇の川で魚をすくったり釣りをしたりするのがここ数年の恒例になっている。同じ冬の帰省でも、川の様子−水量や水草の繁茂具合や泳ぐ魚の顔ぶれといったこと−は、年ごとに異なる。今年目についたのは、大きなナマズが水路のそこここをうろついていることだった。

小ブナが渦巻くようにして群れるすぐ脇を、50センチは優に超えるナマズが悠々と泳ぎ過ぎてゆく。小ブナたちはナマズと一定の距離を保って、時には群れをふたつに割って間を通してナマズを避ける。けれども、危険な捕食者であるはずのナマズがやってきたからといって群れ全体が一目散に逃げるということはしないし、すぐ近くではスゴモロコたちが普通に釣り餌に食いついてくる。食うものと食われるものとのこの平和な共存は、とても奇異に映った。そういえば夏には大きなブラックバスが、同じ場所でやっぱり小魚たちと「接触可能」な距離でゆったりと屯ろしていたのだ。

捕食者には何やら「食い気」のようなものがあって、それを小魚たちは敏感に察知するのだろうか。だからそれを発しないナマズを必要以上に避けることはしないのかもしれない。そう思って眺めていると、小ブナの群れを割ってゆったりと体をくねらせていたナマズが突如加速して群れを追い越し、急に振り返って小ブナに喰らいついた。川底の澱が巻き上げられて一帯がぱっと濁り、小ブナがナマズのアタックを避け得たのかどうかは見えなかったけれど、鱗がキラキラと散らばったのが分かった。

突然目の前で行われた狩りに衝撃を受けてすっかり興奮してしまったのだけれど、襲われた当の小ブナたちは乱れた群れをまたすぐ一つにまとめて、逃げ出すでもなく相変わらずゆったり屯ろしている。そこをまた別のナマズが1尾、2尾と通り過ぎる。時おり、さっき見たのと同じ狩りの光景が繰り返される。そのあまりの静けさに、一つの「系」として不安定に均衡しつつ完成されている自然の姿そのものを見た思いがした。人間はこれにはかなわない、とも思った。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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