2016年04月01日

メジナ Girella punctata

Girella_punctata

昨年の晩秋、南伊豆で生き物の絵を描き続けているラッセルさんのもとを訪れた。自然に囲まれた瀟洒で気取りのない、部屋の中にいながら四方八方の壁から森の呼気を深々と吸い込めそうなおうちでたっぷりのおいしい食事とお酒をごちそうになって、おやすみなさいと上機嫌で酔いとともに床に就いたほんの3時間ほど後には、また笑顔で起き出して近くの漁港にイセエビの水揚げを見に行った。

イセエビは月明かりがあると獲れないそうで、月が満ちてくると漁はお休み。そのギリギリ最後の水揚げとあって、網に絡まっているイセエビは小さなものがちらほら、という程度だった。先の曲がった、フック船長の義手の小さいのみたいな道具でおばさんが黙々とエビを外してカゴに放り込んでいく。

と、空になった網がこんもりと積み上がった中に25センチほどのメジナが1尾横たわっているのが目に入った。この魚らしい、滑らかに筋肉で張り詰めた胸元が漁港の青黄色い電灯の光を受けて光っている。体はじっと横たえたままだけれど確かに生きていて、水から上げられた魚の多くがそうするように、目をぐっと下にやって時折えらを動かしている。何か見えているのか否か、それは分からないけれどじっとこちらに視線をやる瞳を取り巻いて、暗くてもそうとわかるほど鮮やかに水色の環が細く光っていた。その表情を脳裏にありありと思い出しながら、この絵を描いた。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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