2016年06月10日

アヤコショウダイ Plectorhinchus lineatus

Plectorhinchus lineatus

家の前の伊土名浜は潮の流れが緩やかで、またマングローブ林から吹通川が流れ込む地形のせいか透明度がさほど高くない。だからシュノーケリングで沖へ出て、眼下の水深が5メートルほどになってくると、底の様子は真下以外ははっきりとは見えなくなる。前方の白砂の海底にぼんやりと暗い影が浮かび、泳ぎ進むにつれ大きなサンゴの群落が次第に姿を現わすとき、頭の中では決まって「2001年宇宙の旅」のテーマ曲が流れる。5メートル向こうの海底は僕にとってはまさに宇宙のような未知の世界で、この曲は人が未知と出会うときの恐怖心混じりの高揚を実によく表現しているなといつも感心する。

サンゴの群落の周りには、そこを棲み処にしているとりどりの魚たちが群れている。そんな中でひときわ目を引くのがコショウダイの仲間たち。僕が魚の絵を描き始めた頃に惹かれたこの威風堂々たる体格と美しい紋様の魚たちに、家から歩いて浜へ出て、そこから自分で泳いで辿り着いた沖で出会えるという感動は、言葉に尽くしがたい。3〜4メートル下を舞い泳ぐコショウダイたちを追いかけて、水面をぷかぷか漂っていると時間の経つのを忘れる。

そこで見られたコショウダイは今のところ3種。ヒレグロコショウダイ、チョウチョウコショウダイ、そしてこのアヤコショウダイだ。泳ぎ姿を眺めていると、同属できょうだいのようなこの3種の間にも、はっきりと性格の違いがあると分かる。アヤコショウダイは他2種に比べてやや神経質なようで、水面近くをただ浮かんでいるこちらの存在を気にしている節がある。緩やかに追いかける僕が真上に来るのを嫌がって、少し速度を上げてサンゴの間を泳ぎ回る。体高があって地色が白いので、濁りの向こうでも見栄えがする。写真や図鑑だけでは体感できない、そのようなきょうだいの間の違いをいつでも見たいときに見に行けるのは、この環境に身を置いている大きな特権だと感じている。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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