2016年08月19日

“グルクン”(タカサゴ) Pterocaesio digramma

Pterocaesio digramma

浅瀬を泳いでいると、グルクンの幼魚らしき小魚の群れによく出くわす。それはもう無数といってよいほどの数で、ひとつの群れがパチパチと鱗をきらめかせながらざあっと眼前を流れ去ったと思うと、別の群れが下の方からいっせいに流れ込んでくる。そのダイナミックな動きと、青い海の中という異世界感、それに情景が言葉を介さず胸を打つさまは、ディズニー映画『ファンタジア』で、ミッキーマウスが「魔法使いの弟子」の旋律に合わせて波を操るシーンを思い起こさせる。

八重山の海の名人、Iさんの船に乗せていただいてグルクン釣りに出た。西表島の、緑の壁のような山々を眼前に、ピタリと凪いだヨナラ水道は10メートル下の海底まで見えるほどの透明度。撒き餌をすると丸々と肥えたグルクンがたちまち群がってきて、水面下1メートルあまりのところで次々サビキ仕掛けに食いついた。初めて手にした生きたグルクン、美しくて愛らしい。グルクンの色というのは図鑑やネットを見ても赤いのやら青いのやらまちまちで、どれが本当の体色やらと思っていたけれど、実際に赤みにはかなり個体差があると知った。

本州の沿岸部でサビキ釣りといえばアジ、サバ、イワシだけれど、グルクンはどれに該当するかなと考えながら、船の下にどんどん集まってくる魚影を眺めていた。整った顔立ちの、魚としての完成度の高さはアジに似ている。水面越しに見える泳ぎ姿の、意外に逞しい丸さ・太さはサバを思わせる。そして撒き餌に興奮してどんどん水面近くまで上がってくる気軽さはイワシだろう。「サビキ御三家」の特長を併せ持ち、さらには南の海らしいこの色彩の美しさ。グルクンがこの地で愛される理由がよく分かる。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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