
いずれも釣りで出会うことができたフエダイ属(genus Lutjanus)の幼魚たち。
(左列、上から)ゴマフエダイ Lutjanus argentimaculatus / ロクセンフエダイ L. quinquelineatus / イッテンフエダイ L. monostigma
(右列、上から)ナミフエダイ L. rivulatus / バラフエダイ L. bohar / オキフエダイ L. fulvus
石垣の海は、「フエダイの海」だった。
種類も個体数も豊富で、どこで潜っても、どこで釣りをしても、どこで磯遊びをしても一種はこの仲間と出会うことができる。
この仲間の「萌え」ポイントは、同じフエダイ属にありながら体形も顔つきも色彩も生態もさまざまであるところ。特に生息環境には種ごとの、そして成長段階ごとのポリシーがはっきりとあるようで、出会える場所とサイズがだいたい決まっている。
ゴマフエダイ。河川の河口近く、満潮時には海水が逆流してきて溜まるようなところには、必ずと言ってよいほどこの魚がいる。犬歯(正しくは犬歯状歯と言うみたい)の目立つ顔つきは獰猛で、この顔の通り大きなルアーにも飛びかかるようにして食いついてくる。
ロクセンフエダイ。海草の多い遠浅の浜ではこの魚の幼魚がよく見られる。海底の砂をふわりと巻き上げると、なんだなんだと駆け寄ってくる姿が愛らしい。漁港の餌釣りでもサンマの切り身によく食いついてくれる、おそらく好奇心の強い魚。
イッテンフエダイ。海草/海藻っ気のない岩礁の浅瀬でよく出会う。口先がシュッと尖ったシャープな体型で、小さなルアーをよく追いかけるけれど最後の最後で慎重なのか、なかなか食いつきはしない。他の仲間と違って成長段階に応じて生息環境を変えるということをあまりしないのか、ひとつの場所でごく小さな幼魚から比較的大きめの若魚までが混在していることが多い。
ナミフエダイ。漁港の岸壁沿いで1尾だけ釣れたことがあるのだけれど、それ以外は水中でも出会ったことがない。その物珍しさでの贔屓分を差し引いても、僕が見たこの仲間の幼魚の中ではずば抜けて美しかった。飴色の体に小さな水色の斑点がキラキラ散りばめられて、海へ還すのが惜しくて何枚も写真を撮った。
バラフエダイ。スズメダイの仲間に擬態しているのは一目瞭然。背中の白い点も尾びれの黒い線も、実にスズメダイっぽくよくできている。海の中で出会ったときには徐々に大きくなりつつある個体だったせいか、行動パターンはスズメダイより一匹狼系で堂々と振る舞っていて、将来大きな肉食魚になる気配、貫禄が十分だった。
オキフエダイ。魚食魚の顔つきをしたものが多いこの仲間の中では、ロクセンフエダイと並んで柔和な顔つきをしている。水の中で出会ったことはないけれど、漁港の餌釣りではこれもサンマの切り身好き。仕掛けにわらわらと近寄ってくるのがよく見える、愛らしい魚。
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かれらをこうやってずらりと並べるようにして見られるなんて、改めてこの多様な石垣の海に接していられることの幸運を実感する。第2弾を描くのが今から楽しみ。