2016年09月30日

メギス Labracinus cyclophthalma

Labracinus_cyclophthalma_160930
上がオス、下がメス。

Googleマップでメギスのいるところに赤いピンを立てていったとしたら、石垣島はぐるりと真っ赤に囲まれてしまうだろう。すべての岩陰にはこのメギスが潜んでいるのではないかというぐらい、ここにはこの魚が多い。堤防の足下でもタイドプールでも、小針に餌をつけて沈めればメギスがひったくるように食いついてくる。魚たちの食い気がどんなに渋いときでも釣果をもたらしてくれるありがたい存在である一方、この顔を見ると「なんだぁ、またおまえか」と、「なんだぁ」のところに半分ずつの安堵と落胆を込めて声に出してしまう。

けれども海の中でかれらに出会うと、堂々と華やかな姿にすっかり見違えてしまう。20センチクラスの大型個体は雌雄つがいで暮らしていて、近づいてゆくと真っ赤なオスがサンゴの脇にホバリングしながらしっかりとこちらに向き直る。さらに近づいても対峙する姿勢を崩さない。それでもなお近づくとギリギリのところで身を翻し、雌雄つれだって機敏にサンゴの反対側へと逃れてゆく。その迷いのない泳ぎを見ていると、こういう場合の避難経路をきちんと決めているのではないかという気がしてくる。

その姿を知っているから、「またおまえか」と思ってもきちんと記念撮影をして速やかに海へ還す。記念撮影を欠かさないのは僕なりの魚への敬意のつもりだ。これはたとえの話だけれど、普段職場で冗談ばかり言って皆に「はいはい」とあしらわれているおじさんが、家へ帰ると「夫」としてまた「父親」として笑ったり悩んだりしながら毎日を生きている。その姿をひょんなことで知って以降は、彼の冗談もなんとなく大切にしたいと思う、そんな感覚に似ている。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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