2016年11月25日

ヌノサラシ Grammistes sexlineatus

Grammistes_sexlineatus

ヌノサラシは皮膚から毒を分泌する魚で、それを初めて知った子どもの頃は同じ水槽の魚をバタバタ殺してしまう恐ろしい魚のイメージだった。実際、それに近い話を何かで読んだような気もするのだけれど、そういう情報はとかく独り歩きする過程で過剰に強調されやすい。本当のところはどの程度強い毒を出すものなのだろうか。

海の中でも、タイドプールでも、釣りでもこの魚と出会った。昔抱いていた恐ろしい毒魚のイメージとは異なり、ハタの仲間らしからぬコロンとした体型の実に愛らしい魚だ。縄張りを持つ魚の多くと同じように、海の中で近づいてゆくと岩の隙間やコンクリートブロックの陰で踏ん張った顔つきをしてしっかりこちらに向き直る。その背びれの前の部分だけがピョンと朱くて(未成魚の特徴らしい)よく目立ち、薄暗がりの中でもこの魚であると知れる。

皮膚から分泌されるのは粘液毒で、それで海水が泡立つので英語ではsoap fish(石鹸魚)と言うらしい。ところがヌノサラシを釣り上げて手にしてみると、泡立っていなくともこの魚自体がそもそも石鹸みたいなのだ。つるりと丸くて表面は滑らか。毒魚らしい自信の表れか、手の中でも少し体を反らせてみるぐらいであまりジタバタせずにおとなしくしている。どの程度泡が立つものかとゴシゴシ擦り合わせてみる…ようなことはさすがにせず、ポチャンと海へ還すと短い尾を振って深みへ消えていった。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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