2016年12月16日

クロホシフエダイ Lutjanus russellii

Lutjanus_russellii

憧れの魚を求めて、初めての土地を巡る。それ以上に心躍る旅はない。石垣島の家主のKさんは、満月の夜のリーフで生き物たちを探し歩きながら「このために生きてるな、と思うね」と噛みしめるようにおっしゃった。それにおそらく近い感覚、その時間を過ごしているあいだじゅう常に深呼吸の流れが全身くまなく行き渡っているような充足感を、僕はそんな旅に抱いている。

「憧れの魚」と言っても、秘境に潜む幻の魚というわけではない。僕が憧れる魚はいつも普通種で、港で釣りをしている子どもたちのバケツに入っているような魚だ。けれどもそれが狙うとなると意外に難しい。この土地の、この港の、こんな雰囲気のところなら出会えるかもしれない。そう当たりをつけて、初めての土地でバスに乗り、人びとの暮らしの気配が潮の香りとともに漂う港を巡ってゆく。

いま憧れているのがこのクロホシフエダイ。けっして稀種ではなく、本州の太平洋岸から南の海に広く分布しているようなのだけれど、石垣島ではまるで見かけない。どうやら沖縄本島や九州や四国や、つまりは黒潮のより下流側のほうが可能性が高いと見て、秋の初めに那覇周辺を巡ったけれど空振りだった。憧れの魚はこの手にとって見るまで描かない、というのが軽いポリシーだったけれど、憧れのまま一度形にしておくのもいい。次に描くときには、手の上の魚体の感触から出会った港の気配まで、そのすべてを絵に込めてみたい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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