2017年02月03日

ホタルイカ Watasenia scintillans

Watasenia_scintillans

母と姉は茹でたホタルイカが好きで、子どもの頃よく食卓に上っていた。僕はそこに添えられた「辛子酢味噌」が食わず嫌いで(頭の中で辛子と酢と味噌を混ぜてみたときに、それがおいしいという想像がどうしてもつかなかった)長らく手をつけずにいたのだけれど、高校生の終わり頃に何かのきっかけでホタルイカのおいしさを知ったらしい。大学生になって一人暮らしをして、毎食自分の食べるものを自分で決めるということを初めて経験した僕は、よくバイト終わりにボイルのホタルイカを買って帰っていた。遅い時間のスーパーに売れ残っているホタルイカには鮮度に当たりハズレがあって、何度か立て続けにハズレを引いて失望するまでそのホタルイカ熱は続いた。だからいまだにホタルイカといえば、京都は今出川通りの小さなスーパーの、夜9時を回って空きが目立ち始めた生鮮の陳列を、仕事帰りの人たちが少し疲れた雰囲気で眺めている様がありありとまぶたに浮かぶ。

そんなわけで僕の知っているホタルイカはもっぱらボイルされた臙脂色のもので、生の実物にようやく出会ったのは6年前、妻の両親が東京へやって来たときに連れていってもらったお寿司やさんでのことだった。目の前に並んだのは透明感のあるただ小さな普通のイカで、箸でつまみ上げると青く光る液体が滴り落ちる…わけはなく、電池を思わせるケミカルな味がする…わけもまたなく、小さな七輪でさっと炙るとボイルのものよりあっさりとして品のいい味がした。

会社員時代の同僚で富山の海のそばを出処とする友人は、産卵期のホタルイカが接岸して浜に打ち上げられるのをよく獲りに行ったということだ。「ホタルイカといえば基本ボイル」の僕が描いたこの絵の出来は、彼女に一度判定してもらわなければならない。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(2) | 魚の譜
この記事へのコメント
こんなことを申し上げるのもなんですが.
もっと貝類の絵を描いてみてほしいと思いました.
ぬらぬらピカピカとした感じ、すごい.
どうか、貝の肉の部分、たくさん描いてください.



Posted by もりちえ at 2017年02月07日 01:01
もりちえ様、ありがとうございます。
貝はどちらかというと苦手な部類なのですが
(だって魚とあまりにも質感が違って、石を描いてるみたいだから)
肉の部分は確かにモチーフとして魅力的です。
Posted by 長嶋祐成 at 2017年02月17日 15:35
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