2017年03月17日

アマゴ Oncorhynchus masou ishikawae

Oncorhynchus_masou_ishikawae_170317

お盆休みに帰省すると、鳥取の山あいにある妻のお母さんの出処へ里帰りするのが恒例になっている。そしてその道すがら、岡山は鏡野にある郷土料理屋さんでお昼にするというのも毎年のことで、さらにそこで食べるのが山菜料理の定食に「ひらめ」の塩焼きをつけたもの、というところまでお決まりになっている。

「ひらめ」と言っても目が片側に寄ったあの海のヒラメのことではなく、その一帯ではアマゴ(あるいはヤマメ)のことを「ひらめ」と呼んでいる。山道を行くとところどころに「ひらめ釣り」の看板が出ており、最初はどうしてこんな山の中でヒラメ?と思ったのだけれど、道の駅で売られているのを見て得心がいった。

アマゴとヤマメとは亜種同士の関係で、たとえるならば普通の兄弟よりも近く、さりとて一卵性の双子ではない、二卵性の双子ぐらいの距離感がしっくりくる。岡山と鳥取の県境のあたりはちょうどアマゴとヤマメとの自然分布の境界に当たっているようで、さらに放流や釣り場からの脱走で両者はすでに混在しているだろうから、「ひらめ」の正体がそのどちらかというのは厳密には言えなさそうだ。ただ、道の駅で見たひらめにはアマゴの特徴である朱点が美しく散らばっていた。

さてその郷土料理屋さんの定食に添えられたひらめの塩焼きなのだけれど、これが滅法おいしい。僕は子どもの頃から食における川魚にあまり親しまなかったので、アユでもアマゴでもさほど好きではなかったのだけれど、ここでひらめを食べるうちに認識が改まった。お母さんはいつも、ここでお持ち帰りにひらめを焼いてもらって実家へのお土産にする。僕たちが食べている間に囲炉裏端でじっくり焼かれたひらめの入った小さなビニール袋は、セミとキリギリスと風鈴の声が涼やかに吹き通る縁側にとても相応しい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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