2017年03月24日

サクラエビ Lucensosergia lucens

Lucensosergia_lucens

ふだん何気なく食べているサクラエビは深海性のエビで、およそ200メートルから500メートルもの深さに棲むという。昨今、写真や映像で深海の風景を頻繁に目にするおかげで、そこがどんな世界なのかということは視覚的にはなんとなくイメージが湧くようになった。けれども僕自身シュノーケリングで海に入るようになって、改めて深海という世界が生半可な想像力ではとても及ばない遠く離れた世界だということを思い知らされた。なにせたった3メートル逆立ちして潜っただけで水はグンと冷たくなり、耳抜きの苦手な僕は頭に不快な圧力を感じるのだ。500メートルの深海に生きる者たちは何を見、何を聞き、何を感じてどのように体を操っているのだろう。

そんなほとんど異世界と言ってもいいような場所からやってくるサクラエビが当たり前のようにスーパーで売られているのを見ると、人間が自らの活動圏として意識を及ぼす範囲の広さ・深さに感心せずにいられない。少なくとも「食」においては、500メートルの深海はごく日常の場所なのだ。また、そこへ手を伸ばす漁の有り様がいい。場所は駿河湾に限られ、天日干しの美しい眺めとも相俟って地域的な特異性を感じさせるし、漁期が定められていることから季節感と結びついてもいる。さらにその漁法には、アジを狙った漁網が深場へ沈んだ折に偶然サクラエビの群れが入ったことで「発見」されたという、据わりのいい始まりのストーリーまである。

人間の、自然に対するひたむきに探究的な意識が、そんなふうに見栄えのいい様式を伴って具象化されているという意味で、サクラエビとその漁は高度に「文化」を感じさせる存在だと思う。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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