2017年03月31日

スジモヨウフグ Arothron manilensis

Arothron_manilensis

釣りもシュノーケリングも大好きだけれど、当然ながらそのふたつはまったく別のもので、そこから得られる感覚も全然ちがう。釣り、特に石垣島へやって来てから覚えたルアー釣りは、魚とのスリリングなやり取りだ。とりわけイノー(礁池)で腰ほどの水深にまで立ち込んでのルアー釣りは、そのやり取りが垂直方向(下にいる魚を上に釣る)ではなく水平方向(向こうにいる魚をこっちに釣る)になる。水平方向の釣りは魚との距離が近く、立場も対等であるかのような感覚がある。水面のルアーに向けてガバリと魚が突進してくるのには、まるで自分が狙われたかのように鼓動が一気に高鳴ってしまう。

そんな面白い釣りだけれど、連日続けていると「これ、潜ってしまえば一気にいろんな魚見られるのに…」とうずうずしてくる。そのうずうずが高まってくると、晴れた日の日中を釣りとシュノーケリングどちらに使うかに悩み始め、ある日ついにシュノーケリングが勝つ。そうなると母譲りの少し極端な性格で、そこからは連日海に潜るようになる。シュノーケリングで得る感覚は極彩色だ。自分の思い通りに動き、空を飛ぶように好きなところへ行き、宝物のような魚たちに出会う。釣りのような、瞬間的に沸点に達するような高揚ではなく、目の前に食べきれないご馳走が広がっているかのような穏やかで幸福な高揚がある。

今日は遅い午後から荒れ模様になるとの予報だったので、日中天気のよいうちに潜りに行った。ここしばらく釣りを続けていたので、釣りで出会った魚たちの海の中での様子を見られるのが楽しい。子どもにとっての親の職場見学や、親にとっての子どもの授業参観みたいだな、などと思いながら泳いだ。このあと来るであろう荒天が関係するのかどうか、いつになく海底におとなしく腹ばいになって休んでいる魚が多い。真っ白な砂の上にぼんやり佇んでいたのが、このスジモヨウフグだった。3メートルほどの水深を僕がバタバタ鈍臭く潜っても、こちらを横目にふわふわ泳ぐだけでその姿をしっかりと見ることができた。くっきりとした縞模様が白砂に映えて本当に美しい。いつか釣りで出会うことがあるにしても、この背景を得た姿の見事さには及ばないだろうと思った。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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