2017年04月07日

リュウキュウダツ Strongylura incisa

Strongylura_incisa

Strongylura_incisa_front

Strongylura_incisa_back

ダツの恐ろしさはよく知られている。灯りに向かって突進する性質があるため、夜の海でダイビングやボート釣りを楽しむ人のヘッドライト目がけて猛烈な勢いで飛び込んでくるのだ。そのことを初めて知ったのは小学生の頃で、ダツによる死亡事故がワイドショー的な午前のニュースになっているのを母と一緒に見たのだった。それ以来今日に至るまで、僕が夜の海に出かけると知ると母はいつも「ダツに気をつけて」と言う。あのニュースの鮮烈ないたましさはもちろん僕も共有している。

ここ石垣島では、リーフのほんの数十センチの浅瀬にも1メートルに及ぶような大きなダツがいる。日中のシュノーケリングでもダツの姿が見えると少し緊張する。なにせかれらが獲物を見つけたときの突進力は並外れている。リーフの表層をふわふわ泳がせているルアーに、大きなダツが数十センチも水面から飛び上がりながら襲いかかってくる。獲物から姿をくらませるために水面から飛び上がるのか、それとも興奮して突進するあまり飛び出してしまうのかはわからない。いずれにせよド迫力の眺めだ。

ダツのハンティングは、まずこの細長いくちばしで獲物の魚を横向きに捕える。その後少しずつ噛み直しながら獲物の向きを縦にして飲み込む。沖縄本島の泊港で、リリースした小さなテンジクダイにどこからともなく現れたダツが襲いかかり、この手順の一部始終を見ることができた。ただ、最初の突進で獲物を捕える確率はさほど高くもないらしく、ルアーに飛び込んできてもかすりもしないことも多い。またダツのくちばしは硬く、ルアーをくわえてもフックが掛からないこともよくある。

先日、干潮のリーフで大きなダツが掛かった。派手に水面から飛び上がり、僕を中心に糸の長さを半径とする円弧を描きながら泳いで抵抗する。鋭い歯で糸を切ってしまうこともあるから、ルアー失いたくなさに(切れないでくれ)と祈りながら格闘する。ようやく手元にまで寄せてくると、鋭いくちばしに怯んで今度は(こっち来るな)と思う。

くちばしを手網に絡め取るようにしてなんとか動きを封じ、写真を撮った。リュウキュウダツは、ダツの類の中でもとりわけ体形がかっこいい。肩から胸にかけて筋肉が隆起して盛り上がり、ウエストで急に細くなったと思うと背びれ、尻びれの付け根でまた幅広く筋肉が発達する。このとても機能的なあまり少し歪さを含んだような曲線のたまらない色気、何かに似ていると思ったらそれはエヴァンゲリオンの初号機だった。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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