2017年04月14日

クルマエビ Marsupenaeus japonicus

Marsupenaeus_japonicus

〇〇が好き、と公言するのはなかなかによいもので、僕の場合はありがたいことに周りの方々が僕の魚好きをよくご存じくださっている。だから界隈では「あいつに魚見せれば喜ぶだろう」という認識をお持ちくださっていて、僕はその恩恵をいつもたっぷりと享受している。

義弟のシン君の場合はエビだ。眺めたり描いたりしようというのではない。彼は食におけるエビを深く、まっすぐに愛している。妻の実家に帰省するとそこでは誰もが「エビはシン君」だと思っている。お母さんのご馳走の中には必ずエビがラインナップされるし、エビフライであれエビチリであれエビ料理の大皿はシン君の席の前にどすんと据えられるのだ。そして食事も後半になってふと気づくと大皿のエビは残りわずかになって、素知らぬ顔のシン君の銘々皿にはエビの尻尾や殻が積み上がっている。

服飾の世界では縫製が丁寧で上手な人のことを「手が綺麗」と言う。それに倣えば妻のお母さんは料理において手が綺麗な人だ。魚介類は下処理の面倒なものも多いけれど、いつも完璧に心地よい歯ごたえ、舌触りに調理される。シン君がやってくる日の夕方、お母さんは台所でエビの殻を剥く。パチ、パキ、パカリ、と小気味好い音が、少し背を丸めた後ろ姿ごしに小さく聞こえてくる。傾いた陽の光が徐々に濃い影を落とす静かな部屋の中で、その淀みない一定のリズムを耳にしていると、お母さんが料理に対して注いできた長年の心づくしに少しだけ思いが至るような気がする。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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