2017年06月09日

ミスジリュウキュウスズメダイ Dascyllus aruanus

Dascyllus_aruanus

魚の群れにはさまざまなスタイルがあり、そのそれぞれに特有の美しさがある。
ギュッと身を寄せ合って、塊のようになって泳ぐ小魚。近くの河口にときおり現れるそんな群れは、一瞬ひとつの大きな生き物のように見える。あるいは、映像で見るギンガメアジやバラクーダのトルネード。ダイビングのライセンスを取ったらいつか出会ってみたい光景だ。またあるいは、南米の茶色く透き通った流れに宝石を散りばめたかのような、カーディナルテトラの群れ。子どもの頃に憧れたこの燦めきを目の当たりにする日は果たして来るだろうか。

群れ姿の美しさと言えば、このミスジリュウキュウスズメダイも外せない。この魚が作るのは移動する群れではなく、ひとところにとどまる群れだ。それはたいてい、岩から張り出したり海底に小さく広がったりした枝サンゴの周囲に形作られる。その個体同士の、あるいはベースになっているサンゴとの距離の取り方に美しさがあって見飽きない。波に押された体をひらりと立て直して波の来る方へ頭を向ける傍ら、隣の個体との距離は常にしっかりと保っている。僕が近づいたり大きな身振りをとると、その危険度に応じてベースのサンゴを中心とした群れの半球が「わっ」と小さくなる。危険度がもっとも大きいときには、それぞれの個体はサンゴの隙間にしっかりと「収納」される。その動きには無駄がなく、すべての個体の頭の中に計算式が埋め込まれていて、個々の振る舞いをはじき出しているかのようにすら感じられる。

また微笑ましいのが、一つの群れに大小の個体が入り交じっているところだ。群れはいくつかの親子やきょうだいが集まったものなのだろうか、「こんな小さな子が!」というような個体が一緒になってその美しい運動を行なっている。もともと背びれ腹びれが大きくピンと張っていて見栄えのする魚だけれど、小さな幼魚ほど真っ黒な腹びれが不釣り合いに大きく見えて、さらにそこに目の醒めそうな群青が映えて美しく愛らしい。シュノーケリングでそんな群れを見かけると、ドタドタ潜ってはプカンと浮きそうになる体を岩にしがみついて制しながら眺める。そんな鈍臭いやり方でも、かれらの「とどまる群れ」は目の前からいなくならないのが嬉しくて、息の続く限り何枚も写真を撮ってしまう。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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