2017年06月23日

ミナミクロダイ Acanthopagrus sivicolus

Acanthopagrus_sivicolus

父親と毎週末の釣りに熱中していた小学生の頃、チヌ=クロダイといえば堤防釣り師たちの憧れの的だった。好奇心旺盛で悪食なのに、その反面用心深くて賢くて繊細。しかもそれが「魚の王様」たるマダイの親戚筋とくれば、この野趣あふれるいぶし銀の魚体との駆け引きに熟練の釣り師たちが熱中するのも当然のことだ。大きなタモ網を担いで、太鼓リールをつけた落とし込みの竿でただひたすら丹念に岸壁沿いを探って行くチヌ釣り師の姿は、一段上の釣りに挑む求道者のように見えていた。

そんなチヌが今ではルアー釣りの一大対象魚になっている。最初は信じられなかった。あの熟練釣り師たちが餌を沈めるスピードにまで気をつかって繊細に駆け引きしていたチヌが、魚の形したオモチャに食いついてしまうとは!けれども能登の海でルアー釣りをされているTさんが、よくtwitterで立派なチヌの写真をアップされているの見ては信じるほかなかった。

そして石垣島でルアー釣りを始めて1年足らず、僕もとうとうチヌを手にすることができた。内地のクロダイの近縁種、ミナミクロダイ。石垣の釣り名人Oさんが「あそこはチヌがいますよ」と教えてくださったポイントで、それでもやっぱり堤防のチヌの難しい印象が抜けずに「おれじゃ釣れないだろうな…」と思いながら投げていたルアーに食いついた。その後しばらくはルアーを投げるたびに大きな魚体が次々争って飛びつく音が海面に響くほどで、この魚にこんな積極的で獰猛な一面があったのかと驚くばかりだった。そして僕の堤防のチヌ釣りへの認識も少し改まった。賢くて繊細な魚との駆け引きはもちろん面白いだろうけれど、それだけじゃない。どこかでスイッチが入った時のこの荒々しさを知っているからこそ、チヌ師たちはあの繊細な釣りに湛えられた緊張感へと惹きこまれていくのに違いない。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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