2017年07月14日

ハクテンカタギ Chaetodon reticulatus

Chaetodon_reticulatus

サンゴ礁の海に入ると目の前で魚種が爆発する。特に火力の強いのがブダイ、ベラの類だ。種数が多い上に成長段階や雌雄で模様や体形が変わるので、都度図鑑をめくるわけにもいかない海中ではまるでお手上げになる。さらにかれらは動きが滑らかで素早いので写真に収めるのも一苦労、結局いつまでも「あれ、よく見かける気がするけど何だろう…」という状態が続くことになる。ハゼについても大体同じことが起こっている。

それと比べればチョウチョウウオたちはかなりマシな方で、それぞれハッキリと模様が違うし種数もある程度限られているから、少し気合いを入れて集中的に勉強すれば海中でもかなり見分けがつくようになりそうな気がする。「気がする」というのは、いまだにその努力を怠っているからだ。切り身餌の釣りで時々針がかりするトゲチョウや、卵型の体形が印象的なミスジチョウは辛うじて分かるようになった。名前のわかる魚に海中で出会ったときの心地好さや安心感というのは実にいいものだ。

そんな中、このハクテンカタギは初見でも名前が浮かぶぐらい特別で美しい見た目だった。ほとんどのものが黄色いこの仲間にあって、かれらは黒いのだ。着物の染めに因んで名付けられたユウゼンと並んで、黒いチョウチョウウオというのには際立った存在感がある。リーフエッジの深い青みの中で、チョウチョウウオの多くがそうするように「つがい」で連れだって泳いでいた。このつがいは一生、共に行動するものらしい。そこに人間的な意味づけをする必要はないと思うけど、やはりその絆の固さには心を打たれてしまう。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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