2017年09月08日

ダツ、二種 Needlefishes

needlefishes
(上) オキザヨリ Tylosurus crocodilus crocodilus
(下) リュウキュウダツ Strongylura incisa

ダツと総称される魚には何種かが含まれるのだけれど、石垣島でよく見かけるのはオキザヨリとリュウキュウダツ。この両者はいずれも島をぐるりととりまく浅い海でごく普通に見られ、一ヶ所に両方の種が同居していたりもするのだけれど、大きく育つにつれうっすらとした棲み分けの傾向めいたものが生じてくるように感じる。オキザヨリと出会うのは河口域やリーフ外縁で、リュウキュウダツはリーフ内側の穏やかなイノー(礁池)に多い。前者は潮の干満によって流れが生じるような場所を好み、後者はその度合いが低いということかもしれない。

初めてリュウキュウダツの大型個体を手にした時は、見事に筋肉が隆起した肩と腰(つまり胸びれ付近と背びれ・尻びれ付近)に驚いた。浅いイノーを自在に泳ぎ回る小魚に瞬発的に突進するには、このような筋肉が必要なのかもしれない…というのは素人の単なる想像遊びだけれど、理由があってこのような体型になったことは間違いないだろう。自然の説得力を色濃く感じさせる、問答無用に美しい姿だった。すっかりこの魚のことが好きになった。

リュウキュウダツが好きになると、同じダツの仲間のオキザヨリも大型個体を手にしてみたくなった。図鑑で見るオキザヨリは、どうやらリュウキュウダツのように筋骨隆々とはしていないらしい。その違いを肌で感じて、描き分けてみたい。そう思い始めた頃から、不思議とそれまであまり釣れなかったオキザヨリがよく針に掛かるようになった。そして波照間島の西岸で、興奮すべき大捕物の末にとうとう手にしたのが1メートルのオキザヨリだった。かっこいい!それまでメリハリの効いたボディラインから「リュウキュウダツ推し」だったのが、オキザヨリのしなやかな筋肉と硬質な輝きにすっかり魅せられてしまった。嘴が少し短めで、胴長なバランスも美しい。素人の想像遊びをもう少し続けるなら、オキザヨリが河口やリーフ外縁の渦巻く流れに揉まれながら獲物を追うには、極力水の抵抗を少なく、武器である嘴も小回りが利くよう長すぎない方がよかったのではないか。

科学的な論考は専門の方にまかせるとして…あちこちの海に潜って眺めた水中の風景や、立ち込んだ足に感じる水の流れ。それらの体感と、魚たちとの出会いを重ね合わせて、自然の説得力に思いを馳せるのは本当に楽しい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(3) | 魚の譜
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