2017年09月15日

バタフライフィッシュ(パントドン) Pantodon buchholzi

Pantodon_buchholzi

小学校高学年から中学校にかけて、熱帯魚に夢中になった。近所のショップには足繁く通い、週末になると遠方の有名店へ車で連れて行ってもらい、毎月10日の発売日には専門誌を欠かさず買った。
それほどまでに熱中しながら僕には「センス」がなかった。魚に関して気が多く浮気者で、「む!」と思うたびにそれが欲しくて居ても立ってもいられなくなった。その結果、水槽の中は一応混泳可能な小型魚が乱れ泳いで雑然を極め、魚を眺めるのは楽しいのだけれど「世界観」を演出する楽しみはまるで得られないものになった。

僕の「欲しがり」はさらにエスカレートし、肉食魚や大型魚が飼えないことにウズウズした不満を感じ始めた。中学生の僕はかろうじて真っ当な自制心を備えていたらしい。そこで無理矢理に大型魚の幼魚を買ってしまうというようなことはせず、代わりに「MAX10センチのアロワナ」「4センチまでにしかならないピラニア」といった「夢の魚」をチラシの裏に描いて気を紛らわせていた。そんな時にフト気付いたのが、バタフライフィッシュこそ「10センチのアロワナ」であるということだった。

バタフライフィッシュはアロワナ目に属し、確かにその顔つきはアロワナを髣髴させる。のみならず、通り名の由来となった大きな胸びれやフィラメント状に伸長する腹びれ、全体的にガサガサとした鎧のような鱗は、小さくとも古代魚の貫禄に満ちている。そんなわけで僕はさっそく混泳水槽にこの小さなアロワナの親戚を迎え入れ、水面の流木の陰にじっと佇む姿を飽かず眺めた。現実のものになった「夢の魚」に対する愛着は、それから20年が経った今でも色褪せずに心の内にある。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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