2017年10月06日

アイナメ Hexagrammos otakii

hexagrammos_otakii_171006

アイナメ、というと思い出す風景がある。

20年前の大阪は泉南、貝塚市の人工島。父と週末ごとに海釣りに出ていた頃の、お気に入りの釣り場だった。まだ新しげなコンクリートの白と枯れ草色だけが延々と広がる埋立地にはおよそ人けがなく、当時は何かの用地として工事が予定されている風もなくて、ただ更地であることを目的に作られたかのように無機質で寂しいところだった。異質なのは、そんな中に廃車とも思えない活き活きした車たちがびっしり縦列駐車されていることで、それはつまりそこから15分ほども歩いた先にある突堤にやってきた釣り人たちの車なのだった。

食べられる魚が釣れたとき用、飼える魚が釣れたとき用、餌のエビを生かしておく用の3つのクーラーボックスに、用具一式が入った2つのバッグ、それに竿ケース。大荷物をガラガラに載せて早足に歩き、ようやく突堤にたどり着くとそれまでの人けのなさが嘘のように、釣り人たちが数メートル間隔でズラリと並んで糸を垂れている。そんな中でようやく釣り座を確保したら、あとはあまりウロウロせずに「待ち」の釣りをするのが僕たち父子の流儀なのだった。

潮の動きやマヅメ時を気にしながら、魚のいそうなところを次々探し歩いて釣りをする今にして思えば、限られた釣り座で昼前から夕方までじっと待ちの釣りをしていてよく釣れたものだと思うけれど、その頃の大阪湾はそれなりに魚影が濃かったらしい。退屈しないぐらいには魚が釣れた。そしてこの貝塚人工島は、僕たちが通う釣り場の中ではアイナメの多い場所だった。根に居付く魚らしからぬ棘のない滑らかな手触りと、細かな鱗にのったモザイク模様。それを見ると今でも、あの無機質な風景とたくさんの釣り人たちの姿が、当時の色のままにまぶたに浮かんでくる。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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