2017年10月13日

カサゴ Sebastiscus marmoratus

Sebastiscus_marmoratus_171013

生き物の絵を描く目的や理由は人それぞれだけれど、僕の場合は「自分に見えているその魚らしさを描き表したい」というのが動機になっている。だから、画業をなりわいとしている今となってはその動機ばかりに従って絵を描くというわけにもいかなくなっているけれど、元はといえば心の中に「その魚らしさ」のイメージができあがっていて、あとはそれを形にしていくというのが僕にとって「魚を描く」ということなのだった。

カサゴは、僕にそんな動機を与えてくれた魚だった。父と僕に釣りを教えてくれた村田さん、彼と初めて一緒に釣りをしたのは大阪・岸和田沖の一文字防波堤で、その日はサビキ釣りでのアジが大漁だった。そしてアジにも少し飽きた頃、餌をつけて沈めてあった父の仕掛けにカサゴが掛かった。村田さんは喜色を浮かべて「ガシラですやんか!これは美味いんですよ」と言った。その一言がなければ、魚の絵描きとしての今の自分はなかったかもしれない。その瞬間からカサゴは僕にとって特別な魚になり、釣り上げるといつもただちに岸和田一文字での憧れと高揚が新鮮なまま心に蘇った。カサゴを飼いたくて海水魚の水槽の設置を両親にねだり、設置して初めての週末に大阪・南港のかもめ大橋下の岸壁沿いで飼いごろサイズのものを釣り上げた。憧れの魚が常に手元にいる、寝ても覚めても!陶製の土管や岩の隙間に身を潜め、キョロキョロと表情豊かにあたりを見渡す小さなカサゴに僕はすっかり夢中で、毎朝登校のために家を出るのが名残惜しいほどだった。

そうして、すべての魚の中でもいちばんと言ってよいほどに、僕の心の中にはカサゴの「らしさ」が刻みつけられた。だからこの魚を描いているとき、僕はただ自分の心の中のカサゴと向き合っている。そしてそんな自分を「僕は僕の思う絵描きだ」と、誇らしく思う。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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