2018年03月08日

マタマタ Chelus fimbriatus

Chelus_fimbriatus

熱帯魚店通いにいそしんでいた小学校高学年〜中学生の頃、マタマタが売られているのを時折目にした。熱帯魚店では魚以外に爬虫類や両生類を販売しているところも多かったけれど、それらに興味がなかった僕はマタマタも眼中になかった。ただ「枯葉に擬態している、頭が三角形のじっと動かないカメ」だとしか思っていなかった。そもそも同じ「枯葉に擬態してじっとしてる枠」として我が家にはすでにバンジョーキャットというナマズがおり、その枠に関してはすでにお腹いっぱいでもあった。

それから20年以上が経ち、先日作業のBGMにとドキュメンタリー番組を見ていると、マタマタが取り上げられていた。それで初めてマタマタの顔を知って、にわかにこのカメの魅力に引き込まれてしまった。鼻先の尖った三角形のシルエットからなんとなく悪魔的な顔つきを思い浮かべていたのだけれど、予想に反してえらく可愛らしい顔をしている。この形の頭部につける目や口のデザインとしてはこれこそが最終的な答えだと納得させる、コンパクトにまとまった美しさもある。

そして捕食シーンがさらに良い。舌を疑似餌にするワニガメのようなわかりやすい面白さはなく、マタマタはただひたすらじっと魚の接近を待ち(あるいはじりじりとにじり寄り)、小魚が近づくといきなり口をガバッと広げて魚を吸い込んでしまうのだ。噛み付くのではなく、吸い込む。だからその瞬間、獲物ごと水を吸い込んだ首はパツンと膨れ上がっている。その造形の歪さというか、普通でなさに惹かれるのだ。人でも動物でも、生きる上で身につけた他者に抜きん出た能力や技術、その発露される瞬間の普通でなさには、とても色気がある。


 
posted by uonofu at 21:54| Comment(4) | 魚の譜
この記事へのコメント
Posted by 植村 弘一 at 2018年05月06日 00:04
去年の東京の根津の個展に伺った
植村です。
赤ん坊と、嫁さんと〜です。
魚から、亀っ❗しかもマタマタなんて
良いですね〜🎵
また、東京で個展をやられる時は
お邪魔します。
Posted by 植村 弘一 at 2018年05月06日 00:08
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