2012年08月03日

ヒイラギ Nuchequula nuchalis

ヒイラギ Nuchequula nuchalis


ヒイラギはきっと「雑魚」のたぐいで、海の近い街でなら普通に食卓に上がることもあるのかもしれないけど、都市部のスーパーや魚屋さんでは見たことがない。子どものころの防波堤の釣りでは、その名のとおりひいらぎの葉のように薄くて平たくて小さいのがたまに釣れていたけど、小骨が多い魚と聞いていたし食べてみようと思ったこともあまりなかったような気がする。サビキ釣りにかかった小さなヒイラギをひょいとクーラーに放り込む隣りの釣り人を苦々しく思って(こんなに小さいのん、逃がしたりぃな、と)、次に自分の竿にかかったヒイラギをこれ見よがしに海に帰したりしていた。

でも、「潮汁」という言葉を初めて知ったのはヒイラギの調理法としてだったり、あやふやな記憶の中では、塩焼きにした少し大きめのヒイラギをよもぎ色のお皿にのせて、そのみずみずしくつやっとした白身を箸でつついていたりする。本当はそのアジっぽさの香る見た目のとおり、おいしい魚らしい。だから海辺の市場や漁港なんかでは、白い発泡スチロールの箱に無造作に入れられてけっこう売られてるんじゃないかと勝手に想像している。

見た目と言えば、ヒイラギのちょっと鼻先のほうに尖った黒目と、への字に食いしばったような口は本当に可愛らしい。そしてその口はびっくりするぐらい前に飛び出して、そうなるとへの字がおちょぼ口になる。この見た目で泳ぎも軽快で、そんなに大きくもならないから水槽の魚としてはうってつけと思いきや、体表のぬるぬるがちょっと多すぎてすぐに水中にもやもやした粘膜が漂うことになってしまうのは難点。

3〜4年前、突然思い立ってイラストボードに小さな魚を並べて描いていったことがあった。それが魚の絵を描きはじめた最初で、自分がこれまでに父と一緒の釣りで釣って楽しかった魚達を並べたその最初の一枚のボードには、5センチぐらいの小さなヒイラギも描いた。

そのイラストボードを大阪の実家に持ち帰り、両親がよくお説教を聞きに行っていた尼僧さんに見せると、あんたはこのお魚の絵でお父さんと一緒に商売するわ、と言われた。そのときはふうん、そうなれば楽しいやろけどそうもいかんやろなと思っただけだったし、今もまだそういう展開になりそうな気配はまったくないけれど、このことはずっと頭の片隅に残っている。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(2) | 魚の譜
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