2012年08月24日

コトヒキ Terapon jarbua

Terapon_jarbua_120824


魚食性の強いスズキは、できるだけ水の抵抗なく獲物を追うために体が細長く、できるだけ大きな獲物を飲み込むために口が大きくなった(のだと思う)。そうやってある機能に特化した結果の姿、という意味でスズキの体型をレーシングカーにたとえるなら、コトヒキはさしずめハイブリッドのコンパクトカーだ。バランスよく、無駄なく、効率よく。ずば抜けたところはないけれど、オールマイティーな機能を備えている。

子どもの頃、父と一緒によく釣りにいった大阪湾・忠岡港のヨットハーバーで、10〜15センチほどのコトヒキがよく釣れた。それくらいの大きさの魚が釣れたら、まずは飼うことばかり考えていたのに、なぜかコトヒキは連れて帰ったことがなかった。たまたま水槽の空き具合のタイミングが悪かったのか、そのヨットハーバーは河口の気水域にあったので、家の水槽とは環境が合わないと思っていたのか。均整のとれた体型に、美しい縞模様とポイントになる黄色のひれは、防波堤から釣れる小物の中でもとりわけ観賞用に優れているはずなのに。

ところが最近になってあちこちのブログを見ていると、コトヒキを連れて帰らなかったのはどうやら正解だったらしいと分かった。狭い水槽で他種の魚と一緒になると、ぼろぼろになるまでとにかく執拗に追い回して攻撃して、ついには殺してしまうほどの太々しい性格らしい。他魚の鱗を剥ぎ取って食べることすらあるということだった。

考えてみれば、全体的に整っているけれど目を見張るような際立ったところがない、というコトヒキの姿は、「何かで一点突破できるような強みがない」という弱点を示してもいるのかもしれない。その唯一の弱点をカバーするために、高い順応性で塩分濃度の低い河口にまで生息域を広げたり、苛烈な性格を身につけたのだと想像してみると、釣り上げられた時の、口に力を入れて棘つきのえらを膨らませた顔つきの、スズキにも劣らない逞しさに納得がいった。



 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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