2013年03月08日

タナゴ Acheilognathus melanogaster

Acheilognathus melanogaster
(上)タナゴ Acheilognathus melanogaster
(中)シロヒレタビラ Acheilognathus tabira tabira
(下)セボシタビラ Acheilognathus tabira nakamurae


タナゴの婚姻色は凄い。誰そ彼どきの空のようだ。日の入りの後、桃色の夕焼けの名残をぼうっと漂わせた地平線から反対側の濃藍色の空の端まで、あごで弧を描いてぐるっと色を追う、その間に目が捉える光のすべてがここにありそうに思える。

「凄艶」というような字面さえもが似つかわしい。雄が雌を求めるという婚姻色の意味をわざわざ考えなくても、誰そ彼どきを思わせるその色は、一日の終わりのどことない寂しさと、夜の始まりの昂りとがないまぜになったような猥雑な熱っぽさを連想させる。映画『さくらん』では金魚が象徴的に描かれていたけど、色だけならタナゴの方がずっと艶かしい。

そんなタナゴの写真を見るたびに、妻は「七宝焼みたいやなあ」と言う。確かにその通りだ。手のひらに載せられて、夕暮れの色をまとった肉付きのいい胴をぷくっと光る滑らかな粘膜で包んでいる姿は、子どものころに百貨店の催事場で母と一緒に作った七宝焼のブローチのことを感傷的に思い起こさせた。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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