2013年06月07日

イトヒキハゼ Myersina filifer

Myersina filifer
(上)リュウグウハゼ Pterogobius zacalles
(中)オイランハゼ Cryptocentrus singapurensis
(下)イトヒキハゼ Myersina filifer


金沢八景から乗合船でアジ釣りに出た。船の十数人でコマセ(撒き餌)を打ち続けていると、まもなくアジの群れが回ってきたのか入れ食いになった。贅沢なもので、心地好い適度な入れ食いも1時間半以上続くと飽きてきて、アジ以外のものが釣れんかなあとわざとエサを長めに垂らして針にかけてみた。そうするとやっぱり相変わらずのアジと一緒に、小さな縞模様のハゼが釣られて19メートルの海底から上がってきた。

かわいい。せいぜい10センチにも満たない小ささなのに、一丁前に大きな口とひれを精一杯拡げて威嚇している。口を貫いた針の先が体を傷つけていて、針にかかった後、海底でひどく暴れたんだろうと痛ましかった。ようやく針を外して海に返したけど、少しふらふらした泳ぎで深みに消えていく姿が心細かった。

釣れたときに「リュウグウハゼ」かな、と思った。全然詳しくないので当てずっぽうだったけど、家に帰って調べてみて「ああ、やっぱりリュウグウハゼやな」と納得した。少し赤みを帯びた肌色の体に、薄茶色の縞模様。やっぱりそうだ、やっぱりそうだと思いつつ、一方で顔と体型が何となく違う気もする。釣れたのはもっとがちゃがちゃした愛嬌のある顔だったし、体型もリュウグウハゼほどスマートじゃない。でもリュウグウハゼの説明に「東京湾のアジ釣りの外道」って書いてあるしなあ、やっぱりリュウグウハゼでいいんだ、などとしばらく葛藤した。とりあえずごちゃごちゃ考えずに決着させたいし、自分の最初の当てずっぽうを正解にしたい気持ちもある。

でもどうしても気持ち悪くて調べてみると、今日釣ったのと同じ顔と体型をした魚を見つけた。「オイランハゼ」、こいつか!でもこんなに派手な色じゃない、と同属の魚を検索して、ついに「イトヒキハゼ」に行き着いた。(現在は、イトヒキハゼはオイランハゼとは別属。)あ、これや!と声が出た。この心地好さ、人間の根源的な「知る欲求」が満たされた瞬間だ。

イトヒキハゼはテッポウエビと同じ巣穴に暮らす「共生ハゼ」らしい。「敵が迫ると視力の悪いテッポウエビに危険を知らせ、一緒に巣穴にもぐりこむ」(Wikipedia)。せっかく仲良く暮らした巣穴から、釣り針で引きずり出して19メートルも引っ張り上げたのか、と思うと心が痛むような気がする。パートナーのエビには二度と会えないだろうし、無事に海底まで帰り着いたかもわからない。アジをどんどん釣ってバケツに放り込んで殺しているんだから、筋が通らないことはわかっているのだけれど。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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