2013年07月05日

アカヒレ Tanichthys albonubes

genus Tanichthys
アカヒレ Tanichthys albonubes(上)と、近縁種である「ベトナムアカヒレ」Tanichthys micagemmae(中)、Tanichthys thacbaensis(下)

我がバイブルたる『熱帯魚図鑑』(松坂実著、マリン企画、1986年)の冒頭は、「ロージィ・テトラ」が紹介された扉ページをめくるといよいよ、本編はかの有名な「ネオン・テトラ」から始まっている。そのキャプションは、小学生の頃にこの本に出会って以来、いまだに読み返すたびに震えのくるような名文で、この煌めきに満ちた180ページの冒頭を飾るに相応しい。

“本種ほど不当に低く見られている魚はないだろう。値段は安いが、最も鮮やかな色彩をもったこの魚に魅せられて、熱帯魚の世界に入った人も少なくない。”

しかしながら、「不当に低く見られている」ことにかけては、ネオンテトラもアカヒレには及ばない。

中国原産のこの魚は、子どもの頃にはネオンテトラを連想させる青いラインが美しく(そのためネオンテトラが高価だった時代には「貧乏ネオン」と呼ばれていたらしい!)、成長すると背中のメタリックな光沢やその名が示す赤いひれがなかなか味わい深い。また彼らは丈夫で、他の熱帯魚と違って低温にもよく耐え、繁殖も容易とされている。
そんな「勝手の良さ」が、彼らの扱いを貶めているのかもしれない。熱帯魚店ではもはや観賞魚としてではなく、他の大型魚のエサとして売られたり、大型魚の水槽を「いつでも食べていいおやつ」として泳がされていたりする。実験生物としても使われているらしい。

観賞魚界においてはそんな扱いだから、野生のアカヒレが絶滅の危機に瀕していると知って驚いた。中国の個体は既に絶滅し、あとはベトナムに残っているだけとのこと。観賞魚(あるいはそのエサ)として、こんなにも世界中のショップや養魚場に幅を利かせるほどに丈夫でよく殖えるはずなのに、野生種は根絶やしになろうとしている。その理由は知らないけれど、まず人類の活動であることは間違いないはず。生物種が何百年、何千年、あるいはもっともっと長く引き継いできた「生きる、殖える力」なんて木っ端微塵に押し流してしまうようなエネルギーを、人類の活動は持っているらしい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(3) | 魚の譜
この記事へのコメント
初めまして!
いつも拝見してます、otaaiと申します。
ROMってばかりではと思い、筆(?)を取りました。


長嶋さんの絵は、本当に素敵ですね!
私も手芸作家で 魚グッズを作ってる環境上、
色んな方の魚の絵やイラスト等 拝見しますが、
長嶋さんの魚の絵が、1番好きです。
(確か最初に見た魚はサバでした)

テキストも、
いつも楽しく(時にしんみり)、思わず頷きながら拝読してます。

これからも楽しみにしてますので、
頑張って下さい〜!
Posted by otaai at 2013年07月05日 22:31
otaaiさん、

ありがとうございます。
こうして見ていただいていたんだと知ると、
続けていく勇気が出ます。嬉しいです!;-)

otaaiさんのWEBサイトも拝見しました。
私もWEB上でいろんな魚の絵や写真を探し回っていますが、
otaaiさんの作品は何度も見たことがありました。

すごくデフォルメされてる一方で、
「ここは外したくない!」ってポイントをきっちり
押さえられてる感じがして、お魚大好きなのが伝わってきます。
(グリーンスマトラの色なんて最高ですね!)

またサイト見に行かせていただきます。
これからもよろしくお願いいたします。
Posted by uonofu at 2013年07月07日 12:50
こちらこそ、
まさかどこかでご覧頂いてたとは、感激です!
ネットってやっぱりすごいですね(笑)

まだまだ若輩作家ですが、
作りたいもの、改善していきたいところ、
いっぱいありますので、
これからも頑張っていきます〜!


時々 色彩に迷った時は、
よく長嶋さんの絵を眺めに来るんですよ〜
もちろん、ダイレクトに参考にしたい魚があったとは限りませんが、
どのお魚も、特徴的な色と質感が上手に表現されてるので、
大変参考になりますし、
「あぁ、私 この魚のこういうトコが好きだったのか…」
みたいな素直な発見もあり、
どれほど助けられたか…

写真でも(もしかすると実物でも)解らない魅力が、
絵にはありますね。
これからも 楽しみに拝見させて頂きます〜!
Posted by otaai at 2013年07月08日 22:28
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