2013年07月12日

忠岡港の幼魚たち Juvenile fish around the Port of Tadaoka

Juvenile fish around the Port of Tadaoka
(上段、左から)ニベ Nibea mitsukurii / ボラ Mugil cephalus / コトヒキ Terapon jarbua
(中段、左から)キチヌ Acanthopagrus latus / コショウダイ Plectorhinchus cinctus / スズキ Lateolabrax japonicus
(下段、左から)アイナメ Hexagrammos otakii / クロダイ Acanthopagrus schlegelii / ヒイラギ Nuchequula nuchalis


大阪湾に面して「忠岡町」という日本一小さな町がある。大津川の河口に位置するこの町の港にはヨットハーバーがあって、脇に100メートルほどの長さの突堤が、川の流れに対して垂直に横たわっている。堤の両サイドは角ばった面取りがされた小ぶりのテトラポッドで護岸されていて、正方形に少し広くなった先端には水銀灯が一本立っている。
先端でも直下の水深はわずか3メートルほど。またテトラポッドと言えば、外洋に面した防波堤を護る巨大なものがカキ殻をびっしりと纏って逆巻く波に洗われている姿こそが「らしい」けど、ここでは整然と規則的に並べられて静かな水音を立てている。

そんな変哲のないこの突堤が、しかし、小学生の頃に父と頻繁に訪れた実に楽しい釣り場として思い出に残っている。淡水と海水の混じり合う汽水域の豊かな環境に惹かれて、水深3メートルの静かな堤防とは思えない数多の種類の小魚たちが集まっていた。本来は汽水域の魚じゃないはずのクロソイの子ども。成魚はここにはいないのに季節になるとわらわらと集まってくるアイナメの新子。テトラポッド周りではイソギンポやシマハゼがすぐに釣り餌に飛びついて、退屈させない。先端から仕掛けを投げれば、マハゼ、コトヒキ、ヒイラギといった汽水域らしい顔ぶれの魚たちが食いついた。短竿をへし折るほどの大きなボラと、水面下をちょろちょろ泳ぎ回るその幼魚。夕暮れどきになると、大群で渦巻くカタクチイワシを狙ってスズキの若魚やタチウオがごく浅いところまでやってきて、キラリと腹を光らせるのが見える。気味の悪い大きなエイが、すぐ足下の濁った水の中を悠々と羽ばたいていたこともあった。

釣り人の憧れであるクロダイを父が初めて釣ったのもこの場所で、その同じ日に自分の竿にはちょうど同じぐらいの大きさのキチヌがかかった。とてもよく似た近い仲間だけれど、色や体型の確かな違いがこうまで別の印象につながるのか、と感じた新鮮な気持ち。またあるいは、大学以降実家を離れてずっと遠ざかっていた、父との釣りの楽しみを数年ぶりに味わった日に釣れた若いコショウダイの、手の中でひれとエラを広げて威嚇するその感触と威厳に満ちた姿。それらは、今こうして魚の絵を描き続けている原動力の根っこになっている。

ごく当たり前に豊かな命が息づいているあの突堤が、これからもずっとあのままであってほしいと思う。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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