2013年07月19日

コノシロ Konosirus punctatus

Konosirus punctatus

この魚について調べると、「サッパ Sardinella zunasiによく似る」と書かれていることがある。「見分け自慢」をしたいわけではないのだけれど、この2種がよく似ている、というのがあまり理解できない。コノシロは体側に斑点があるし、サッパほどには「ヒカリモノ」の色をしていないし、何より顔つきが全然違う。サッパはニシンやマイワシと同じく口元の骨格がやけにメカニカルで、原始的な魚の風合いがあるのに対して、コノシロは鼻先がまるく突き出した当世風の愛嬌ある顔立ちだ。図鑑を見れば他にも見分けるポイントはたくさん見つかるけど、「顔つき」というのはそういう理屈を越えて、何より感覚的かつ的確に認識できる差異だ。人混みの中から友人を見出せる、それが理屈っぽい特徴(耳の付け根の下端は、鼻孔の下端よりも上に位置する。みたいな)ではなくて顔の総体的なイメージに依存しているように。この2種を似ていると言うならば、もっと似た魚同士はいくらでもいる。

それが最近になって、その認識が少し揺らぐようなことがあった。きっかけは友人が嫁いだ六本木のお寿司屋さんで食べた、新子の握り。握り一貫に3尾ぶんの開きが使われている、その繊細さに驚いていると、大将が「これでも大きくなったよ、ちょっと前は親指の先ぐらいの大きさの身を5匹付けて握ってた」と言うのでますます吃驚した。今自分が手に持っている3尾付けのサイズでも、もはや小さすぎて体側の斑点はあまり目立たないし、大人のコノシロよりもヒカリモノらしい青みがかった皮鉄色をしている。確かに、これは新子の握りと知っているからコノシロだと思っているけど、そうでなければサッパの幼魚と見分けがつきにくいかもしれない。そう思って、「コノシロ サッパ 幼魚」で画像検索して、出てきたものをコノシロかサッパか当てる一人遊びをしていたら、まんまといくつめかの画像で間違えた。(ただし、まだ自分の間違いが信じられず、そのブログ記事を書いたかたが間違っているんじゃないかと思ってもいる。だって、上あごの方が出っ張ってるし。)

サッパの学名における種小名のzunasiは日本語の「つなし」から来ているらしく、そして「つなし」というのはサッパではなくコノシロの幼魚の古名だそうで、ここでも混同が起こっている。サッパの学名を記載したのはPieter Bleekerというオランダ人医師かつ魚類学者で、東アジアの魚の名付けに数多く携わった。そんな功績ある学者でもコノシロ・サッパを巡る混乱には巻き込まれてしまうのだから、納得いかない点は残しつつも、この2種の魚はやっぱり何か人間を混乱させる姿をしているのだ、とここではいったん結論付けようと思う。ちなみに、コノシロの学名における属名は"Konosirus"で、こういう和名を基にした学名(それも属名)の付け方には心がほっこりする。この名づけはテミンクとシュレーゲルという2人のオランダ人によるもので、彼らもまた日本産魚類の分類と学名記載における大功労者たちだ。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: