2013年10月04日

マサバ Scomber japonicus

Scomber japonicus

サバの背の虫喰い紋の美しさが、そもそも魚を描きたいと思った原点だったように思う。スーパーのサバもいいけれど、生きたサバの背の美しさは形容が難しい。透き通った体表の向こうに空間が広がっているような、不思議な3D感がある。その空間は、酸素がたっぷりと溶け込んだ深い滝壺のような青緑色をしている。目をうんと近づけて覗き込む、その角度を変えるごとに複雑に色が移り変わる。うすい青緑色の釉薬を使った焼き物の透明感と光の多彩さに少し似ている。

腹の潔い白さも美しい。友人と手漕ぎボートで釣りに出た時、サビキ釣りの竿先が突如ゴンゴンと引き込まれた。まさか小ぶりのハマチでも掛かったんじゃないかと思うような強烈な引きだった。ボートの反対側へ走ろうとするのをジリジリ巻き上げると、ゆらめく水面の向こうにギラリと鈍く陽を照り返す白い腹と、虫喰い紋を纏ったうす青緑が見えた。「サバや」友人と声を揃えた直後、竿の手応えはフッと消え、サバは体勢を立て直してあっという間もなく深みに消えていった。

サバの鱗はごく小さくてほぼ透明だ。おそらく、それが折り重なることで複雑な光の透し方をしているのだと思う。その光をなんとか紙に捉えたくて何度も描くのだけれど、いつも背の色を置いた途端に半ば諦めてしまう。今回は普段とは少し違う絵の具の使い方をしてみたけれど、これもあまり芳しくない。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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