2013年11月08日

小赤(キンギョ) Carassius auratus auratus

Koaka

金魚すくいにいる赤くて小さい金魚は「小赤」と呼ばれる。品種ではなく、和金(金魚といってまず頭に浮かぶ、最も普通の魚の形をした赤い金魚)の小さいのを指す流通名だ。

金魚界にあって最もありふれた存在である彼らは、生まれつき苛烈な運命を背負っている。養魚場で3〜4センチにまで育って小赤として出荷されると、卸問屋を経て行く先は大きく分けて恐らく2つ。ペットショップと金魚すくいの縁日だ。
ペットショップと言っても、そこから買われていく小赤たちの大半の行き先は快適な金魚鉢ではなくて、お腹を空かせた獰猛な肉食魚の水槽だ。小赤よりも華やかで魅力的な金魚は他にいるから、飼う目的でわざわざ小赤を選ぶ人は少ない。彼らはあくまでエサとしての扱いに過ぎず、大事にしてくれる飼い主の下に行き着く可能性は低い。

金魚すくいの的屋に買い取られた方が、まだ生き延びる公算は大きいかもしれない。金魚すくいで取ってきた金魚が長生きしてこんなに大きくなった、というのはよく聞く話だ。けれども、運よくそこまで辿り着くには、“子どもたちが何百回と手を突っ込んで濁り切った水槽の水に体を蝕まれるよりも先にうまく掬われて脱出すること”、“掬った子どもが「この小さなビニール袋のままだと金魚は死ぬ」のをちゃんと知っていること”、“その子の家庭が金魚の飼育に肯定的であること”、“肯定的なだけでなくちゃんと生き延びさせようという意思と行動力を持っていること”等々の関門が立ちはだかり、ハードルはやはり高い。

仕事でよく訪れる五反田の、とある裏道に面した印刷会社の外に金魚の水槽がある。その住人たちの中に、もとは金魚すくいの小赤だったんだろうな、という立派に肥えた和金がいる。週に1,2回、水槽を横目にその道を通るようになってもう4年ほど経つけれど、太陽光のせいでどんどんコケが生えて緑色になっていた水槽が、ある日すっきりと無色透明に戻る、という安定したルーチンに飼い主の愛情が感じられて微笑ましい。
一度、何か飾りを入れてみたくなったのか、水槽に飾りサンゴが投入されたことがあった。サンゴを入れると水質がアルカリ性に傾くので、金魚にはあまりよくない。実際にボンヤリした泳ぎ方になっている金魚たちを見て、大きなお世話ながら内心やきもきしていた。けれどもさすがは愛情こまやかな飼い主、金魚の異変にすぐに気付いたらしく、数週間後には元の水槽に戻っていた。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(4) | 魚の譜
この記事へのコメント
こんにちは。金魚のメッカ、大和郡山の友人の家にときおり遊びに行きます。これが前日が雨であった場合友人の家の前の溝には金魚池から逃亡した金魚が泳いでいます。これが小学生の頃なら喜び勇んで溝に入り金魚を捕まえていたと思います。はたしてこの逃亡者たちは幸せになったのでしょうか?少なくとも肉食魚の餌になるよりは幸せかな。
Posted by aloha at 2013年11月09日 10:47
alohaさん、こんばんは。
調べてみると大和郡山では本当に「野良金魚」が多いんだそうですね。色が目立つので鳥に狙われて食べられやすいんだとか。
溝を金魚が泳いでるなんて想像するだけでワクワクします。
Posted by uonofu at 2013年11月09日 20:01
 はじめまして、雑記鴨を書いている寿と言います。 先日はブログにコメント頂ありがとうございました。
勝手に記事にしてしまい申し訳なく思っていました。 
 精細な水彩画を拝見してファンになりました。 そこからこのブログにたどり着き、コラムを読んで胸が熱くなりました。 大人の絵日記(回想録)と言うのかな?凄く惹かれるものがあり、鋭い観察力と感性をお持ちの方だと感じました。 書籍化も視野にいれてるのかな? 発売されれば購入したいと考えています(笑)  今後とも活動を期待しています。 また遊びに来ます。

Posted by 寿 at 2013年11月14日 03:00
寿さん、ありがとうございます。ブログの記事を拝見して驚きました。嬉しかったです。
書籍化はこれから先の夢の一つです。これからもよろしくお願いします!
Posted by uonofu at 2013年11月20日 01:14
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