2013年11月15日

古代魚の幼魚たち Baby Living Fossils

baby living fossils
(上段左)シルバーアロワナ Osteoglossum bicirrhosum (右)ブラックアロワナ Osteoglossum ferreirai
(中段左)アリゲーターガー Atractosteus spatula (右)ピラルク Arapaima gigas
(下段左)ポリプテルス・エンドリケリー Polypterus endlicheri endlicheri (右)ポリプテルス・セネガルス Polypterus senegalus meridionalis


観賞魚の世界において「古代魚」は一つのジャンルをなしている。定義ははっきりしていないらしいが、太古の昔からほとんどその姿を変えていないという、いわゆる「生きた化石」の面々だ。

これが数千万年、数億年に渡って積み重ねてきた時間の重みなのか、彼らの姿には奥行きのある静けさをたたえた重厚感がある。鎧のような鱗や平たくゴツゴツとした頭、表情を押し包んだ鈍い瞳。それらを見ていると、彼らの祖先が生きたであろう風景が脳裡に浮かんでくる。ソテツのような動物的質感の木々が生い茂る森のほとりの大きな湖に波紋が揺れ、微生物の澱で濛々と濁った水の中をガーやピラルクの黒い影が悠々通り過ぎる。

そんな魅力的な彼らを自宅の水槽に迎え入れるのは、拍子抜けするほど簡単なことだ。熱帯魚店に行けば、養殖物の古代魚の幼魚たちがたった数百円から数千円で売られている。しかし簡単なのはあくまで「迎え入れる」までのことで、古代魚の多くは肉食性の強い大型魚であるため、生半可な覚悟では維持できなくなってしまう。設備にもエサにもお金がかかるし、長命な彼らとの付き合いは何十年にも及ぶこともあるらしい。

方向転換もできないような狭い水槽に閉じ込められて体調を崩したり、川や湖に放されて外来魚騒ぎの元になったりという話もよく聞く。外来魚というとブラックバスやブルーギルのように在来種を駆逐しながら勢力を拡大していくふてぶてしいイメージだけれど、そんなのはごく一握りで、放棄されたほとんどの観賞魚は環境の違いに耐えられずに死んでいくはずだ。

かく言う自分自身も小学生の頃、今いる住人を追い出してまで45センチの水槽で30センチになるポリプテルスを飼おうとしていた。幸運にもそれは実行されなかったけれど、その後ろめたさもあるものだから熱帯魚店でつい後先考えずに大型魚に手を出してしまう子どもを詰る気にはなれない。最初は衝動買いでも長く大切に飼っていく人だってたくさんいるし、もし失敗したとしても子どもには生き物の命を考えるきっといい経験だ。考えなしに飼い始めて、死なせたり密放流したりすることに何も感じない大人になるよりはよほどいい。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(4) | 魚の譜
この記事へのコメント
こんにちは。
以前よくバス釣りに通っていたダム湖で春の暖かい日差しの中、悠々と日向ぼっこしてた50cm程のガーに遭遇しました。これも誰かが放したのでしょう。その後の何度か遭遇しましたが、私が投げるルアーはことごとく無視されました。なかなか賢い奴でした。
Posted by aloha at 2013年11月16日 11:39
alohaさん、こんばんは。
やっぱり本当にいるんですね。頭では分かっていても、目の当たりにすると大きさや形にびっくりしそうです。
Posted by uonofu at 2013年11月20日 01:15
美しいイラストですね。イラストを描くために、おそらくつぶさに魚を観察されるからこそ、湧いてくる種の尊厳への畏敬の念を感じました。

自宅で生物を愛でるというある種の矛盾に思い至ります。
良い文章ですね!これからもよろしくお願いします。
Posted by shimadaAQUA at 2013年11月20日 23:31
shimadaAQUAさん、こんばんは。
アクアリストにとってその矛盾は、いつも心のどこかにチクチクひっかかっているものなんじゃないかと思います。
私は長らくボララスを飼っていますが、繁殖させたことがありません。調子良く飼えているように見えても、雌雄が十分な数同居しているのに繁殖しないほど異常な環境で飼っているのだということを突きつけられているような気がします。
でも、だからと言って人間がそうやって魚を飼うことを否定すればいい、というわけでもないと思うのです。

写真の美しい、素敵なブログ拝見しています。私も最近盆栽にとても興味が出てきました。アクアリウムと相通ずるものがありますね!
Posted by uonofu at 2013年11月22日 02:51
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