2013年12月06日

ウィーディーシードラゴン Phyllopteryx taeniolatus

Phyllopteryx taeniolatus

タツノオトシゴの仲間のおよそ魚らしくない外見は、馬や龍に喩えられる。日本では龍のイメージが主流で、「ウミウマ」と名付けられた種もいくつかはあるけれど、それらをもひっくるめた総称として「龍の落とし子」とネーミングされている。さらに冗談みたいだけれど近縁種には「タツノイトコ」「タツノハトコ」というのまでいて、あくまで「龍推し」であることがわかる。そろそろ年賀状の季節になって、漠然と「午年→ウミウマ」をイメージしていたのだけれど、考えてみたらモチーフとしてのタツノオトシゴの仲間は既に辰年に取られてしまっているのだった。

英語圏では馬のイメージが強いらしく、この一群はまとめて"Seahorse"と呼ばれている。が、それでもけれん味たっぷりなこれら近縁種のことは、やっぱり龍に見えるらしい−"Seadragon"と名付けられた魚たちだ。オーストラリアの海に3種が棲息している。そのうち水族館でもよく見かけるのはリーフィーシードラゴンと、このウィーディーシードラゴンの2種。

リーフィーは"leafy"(葉っぱが茂った)の名の通り、全身を海藻そっくりのひらひらとした皮弁で飾りつけることで周囲の環境に溶け込んでいる。動きもゆっくりだから、海の中ではただ波に揺られている海藻の塊のように見えるに違いない。
他方このウィーディーも"weedy"(seaweed=海藻)の語を冠してはいるものの、シルエットはリーフィーより随分さっぱりしている。皮弁が少ない彼らの場合、自らの葉っぱで身を隠すリーフィーとは異なり、体全体を一片の海藻のように見せることでカモフラージュしなければならない。その事情が、彼らの少し度を過ぎて美しいように思える色彩に現れているのではないか。彼らの色づかいの夢のような見事さにはただただ溜め息が出るばかりだ。

リーフィーとウィーディーのように、何かを「対」で考えることは、対象についての情報量と理解をうんと増大させてくれる。対になっているおかげで我々は「あ、これはシードラゴンのフサフサのほう」「こっちは色がすごいほう」と体系立てて認識できるので、単体で捉えるよりもそれぞれの特徴の理解を深めることができる。唐突だけれどこれを大相撲で喩えてみる。白鵬が一人横綱として君臨していたときよりも日馬富士が台頭した後の方が、白鵬の「圧倒的な強さ、品格、美しさを誇る正統派の大横綱」としてのイメージが、それに対する日馬富士の「幕内最軽量、ポロポロ取りこぼすがツボにはまった強さは白鵬をも上回るムラっ気横綱」のイメージと高めあうことでより強く匂い立っている。魚を種で比較しつつ見ていくことの面白さもそこにある。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(2) | 魚の譜
この記事へのコメント
こんにちは。昔、海水浴に行った先のお土産屋で売っていた貝の標本セットの中にタツノオトシゴもカラカラに乾燥した状態で入ってたのを思い出します。
タツノオトシゴのどの種類見てもよくこんな形の生物が生まれてきたなと関心します。
Posted by aloha at 2013年12月08日 12:14
alohaさん、
そういうお土産ありましたね。私も持っていたような気がします。考えてみるとちょっとグロテスクですね。
Posted by uonofu at 2013年12月12日 01:00
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: