2014年01月03日

マトウダイ Zeus faber

Zeus faber

マトウダイの名の由来には二つの説がある。ひとつは大きな口を開くと吻が長く伸びて馬面になるから「馬頭鯛」。もうひとつは目玉模様の入った円盤状の体が弓道の的のようだから「的鯛」というものだ。

動物の顔つきからの連想の方が面白みがあるように思うし、何より今年の十二支でもあることだから「馬頭鯛」説を推したいところなのだけれど、内心「的鯛」に比べてちょっと分が悪いかな、と思っている。馬面であることを表現するのに「馬頭」という言葉は少し回りくどい。マトウダイの名が昔々の漁師によるものだとして、自らの生活の根幹において来る日も来る日も魚と関わっている海の男たちの名付けは、もっと直截的であるはずだと思うのだ。例えば同じく面長な魚のウマヅラハギのように、身も蓋もなく。

的のような姿だから「的鯛」はその点、呆気ないまでにストレートだ。海から引き揚げた魚をパッと見て「マトじゃマトじゃ」と声をあげる漁師の姿は思い浮かべやすい。一方で馬面だからマトウだ、という言葉選びはどうも陸の人間のものに思える。洒落っ気を利かせようとするだけの距離感が、魚との間にある気がする。

そうやって想像を膨らませてゆくと、「的鯛」説には海に生きる人間の質実たるプロフェッショナリティが滲み出ていて実に味わい深い。あくまで、全ては想像に過ぎないけれど。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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