2014年04月18日

ヤマメ Oncorhynchus masou masou

Oncorhynchus masou masou

ヤマメは、アマゴと亜種どうしの関係にある。
そこで「そもそも亜種とは…」というような話をしようと思ったのだけれど、改めてWikipediaを見てみると亜種うんぬん以前に「種」の定義からして一筋縄ではいかない、ということが分かったのでやめた。素人は素人らしく、意味の正しさはさて措いて感覚的なたとえ話をするならば、種どうしの関係は兄弟姉妹のようなもので、亜種はもっと近しく双子のようなものだ。

兄弟姉妹といえば、もっと興味をかきたてる話がある。

ヤマメには一生を河川で暮らすものと、サケのように川を下って海で育ち、また産卵のために川に戻ってくるものとがある。同じヤマメなのに、ふたつの全く異なる生活史があるのだ。かれらいっぴきいっぴきがどのようにして自らの生き方を選んでいるのかとても気になるところだけれど、どうも河川の流量や月の満ち欠けが関係しているらしい。また、北海道では雌の大半と一部の雄が海を選ぶという(田口哲著『北の魚類写真館』北海道新聞社、1999年、より。美しい写真と、フィールドワークの真摯さが伺える解説文が素晴らしい本。図書館で数回借りた後、どうしてもお気に入りなので買ったほど)。

生き方の違いは姿にも表れる。川にとどまったものは絵のような丸みのある顔と独特の模様を生涯にわたってほぼ保つけれど、海へ下ったものは豊富な栄養を取り込んで大型化し、まさしくサケのように鼻先が尖って「サクラマス」と呼ばれるようになる。色もサケのようで、海で過ごしている間はギラリとした銀色。川へ戻ると美しい桜色の斑が浮かんでくる。

面白いのは、大きさも姿かたちも別種としか思えないほどに違うヤマメとサクラマスが、やっぱりかれらには同種であると分かるらしく、行動を共にするということだ。はるばる長旅を終えて生まれ故郷に帰ってきたサクラマスが、半分以下の大きさのヤマメに寄り添っている姿には、何か心を揺さぶるものがある。

『北の魚類写真館』にもそのような写真が載っているのだけれど、「体の大きさは違ってもサクラマスとヤマメは同種であり同じ川であれば親兄弟とか親戚であるかもしれない」というキャプションにハッとした。もし本当にそうなら、なんという劇的な再会だろうかと。けれども、ハッとした本当の理由はもう少し別のところにあるのだと少し経って気づいた。そうやって魚を擬人化して人間の感情を当てはめてみて感動したわけではなく、そのような見方が自然に出てくる著者のフィールドワーカーとしての細やかさ、臆面もなく気障にいえば「愛のある視線」に、畏敬の気持ちが湧いたのだった。


 
posted by uonofu at 18:00| Comment(0) | 魚の譜
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